は活字中毒者であります。トイレでも電車の中でも布団に入っても、本無しでは居られません。こうした性癖は幼少の頃からずっと続いておりまして、知識を得ようとか、教養を身につけたいと云った高尚な動機によるものでは決してなく、単なる趣味嗜好の問題なのであります。
だからと云って、教室の隅で一人孤独に読書する、物静かな子供だった訳ではありません。割と、仲良くみんなと外で遊ぶタイプ。しかしひとたび独りになると、興味は本に移ります。ボ〜っと過ごす事が出来ない性分なのです。テレビはあまり視ませんし、特にバラエティ番組はどうしても好きになれません。結果として、本を読むしかなかったのであります。
勿論、自由に好きな本が買えるような潤沢な小遣いが与えられていた筈もなく、たまに巡回してくる沼津市立図書館のマイクロバス(巡回文庫一号)から本を借りたり、学級文庫を片っ端から読破したりしておりました。何しろ活字に餓えておりましたからなぁ。誕生日やクリスマスのプレゼントについて何が欲しいかと問われれば、「図書券!」と即答する妙な子供だったのであります。
子供の頃は、本ばかり読んでいた。授業中も、夏のプール教室の帰りも、修学旅行の列車の中でも。
文月悠光著「洗礼ダイアリー」(ポプラ社)からのお言葉です。ことある毎に「本を買ってくれ」という私に対し、両親は「そんなに本が欲しければ、大人になって自分が稼ぐようになったら自分の稼ぎで買いなさい」という返答をするのが常でありました。だからと申しますか、今は自由に買いたいだけ本を買っておりますよ。だって大人になったら好きなだけ本を買うというのは、幼少時代からの私の夢であった訳ですからね。
そういえば、修学旅行の準備をしている際、バッグに文庫本を入れようとする私に対し、「修学旅行に本なんて持って行かずに、修学旅行自体を楽しみなさい」と諭された事があります。分かってないなぁ。別に修学旅行の列車の中で読もうと考えていた訳ではなかったのです。修学旅行中にだってトイレに行くでしょう。私は本がないとウンチが出ないのです。本を一冊も持たずに二泊三日の旅行に行く自信など、持ち合わせていなかっただけなのでありますよ。
こうした活字依存の性癖は、今でも全く変わっておりません。どこへ出掛ける時でも必ず何らかの本を携帯していく行為は、もはや私の流儀そのものなのでありました。
【つづく】
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