日、四十数年来の夢であった、大日本図書刊の新美南吉童話全集全3巻をとうとう手に入れる事が出来ました。新美南吉の大ファンである私にとって、これらの本はまさしく宝物であります。このゲットしたばかりのお宝を、嬉々として読んでいた時のお話でありますよ。
箱入りの布張り四六変形判という美しい装丁のこの本、一つだけ難点を挙げるとすればスピンがついていない事でしょうか。あ、スピンとは栞の代わりの為の紐の事でありますよ。四六判などのいわゆるハードカバー書籍にはスピンがついているのが一般的。にもかかわらず何故かこの本にはスピンがありません。まさかこの美本のページを折ってしまう訳にもいかず、さりとて栞を使う習慣の無い私は、新聞の広告を破いて栞の代わりにしていたのであります。
普段使ってるブックカバーにはスピンを取り付けてありますから、このカバーを被せれば万事解決するのですけれども、通常の四六判よりもちょっとだけ大きいこの本は、ギリギリの所でこのカバーに入らないのでありました。中々上手くいかないものですなぁ。
するとかみさんが、見かねて栞を手作りしてくれました。厚紙に絵を描いて紐を取り付けただけのシンプルな道具でありますが、必要にして十分な機能。しかも中々お洒落な一品であります。
願ったりだ。
西加奈子著「炎上する君」(角川書店)からのお言葉です。日本語としては「願ったり叶ったりだ」が正しいのでしょうけれども、西加奈子氏のような迫力のある文体であれば、こうした省略もあまり違和感を感じません。氏の著作である「サラバ!」の直木賞受賞も、こうしたパワーに満ち溢れた筆致によるところが大きいのではないかと思います。
かみさんお手製の栞をよく見ますと、猫の絵や葉っぱの絵や矢印やその他クネクネした図形などが描かれております。単なるイラストの羅列なのか、それとも何らかの暗号なのか。よくよく見ると何とも不思議なデザインなのでありました。Kazちゃん、一体これ何なの〜?
【つづく】
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