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  今週のお言葉  

 陰様で最近、物欲の炎は比較的おさまり気味であります。そうは云っても油断は禁物。物欲は、あたかも流行性感冒(インフルエンザ)のように、ある日突然発症し、欲しくて欲しくて居てもたってもいられなくなります。ゴロゴロと床をのたうち回る程の猛威を振るう事もしばしば。一旦この物欲病に冒されたら最後、購入に至るまで決して完治致しません。ピナレロ号しかり、ピンクちゃんしかり、チビ号しかりであります。そこに理屈もへったくれも無いのであります。冷静に考えれば、一人でスポーツ自転車3台も所有するなんて常軌を逸した行為と申せましょう。しかし、欲しいよぅ欲しいよぅ自転車が欲しいよぅといった具合に、あたかも赤ん坊に戻ってしまったかの如く、精神の制御が効かなくなっちまうのであります。あ、一応、ヘニョピリンという物欲病のお薬があるのですが、劇薬の為、服用には注意が必要ですぞ。

 実は先日、自転車仲間のUさんがこの病に(おか)されてしまいました。彼女はキヤノンデールのロードバイクを筆頭に、同じくキヤノンデールのシクロクロス、ゲーリーフィッシャーの29インチのマウンテンバイク、KHSの小径車F20RAを購入しただけでなく、その物欲的興味は、鉄道模型や万年筆にまで及ぶという、一種男前な志向の女性であります。今回は、英国が誇るThe折り畳み小径車、ブロンプトンに魅せられちまったようなのです。

 彼女のような性癖の方は、衝動買いなどと云う愚劣な購入方法をとったりは致しません。これはあくまで想像に過ぎませんが、執拗にネットを検索し関係ブログを読みあさると共に、あらゆるパンフレットを収集。その上で自転車雑誌を買いまくったに違いないでしょう。いやそれだけでは無く、「小径車パーフェクトガイド」「小径で行く輪行の旅」などと銘打たれたムック本も、相当数購入した筈であります。

 実はスポーツ自転車の購入は、皆様が考えている程簡単ではありません。同じモデルにも、コンポーネント違い、ハンドル形状違い等の様々なバリエーションが存在し、更にフレーム寸法や車体カラーを掛け合わせるとなりますと、実際の車種は想像以上に多岐に渡る事になります。しかもこうしたバリエーションは、仕向地(しむけち)によって微妙に異なっていたりして、例えば、あるカラーはヨーロッパでは流通しているけれど、日本の正規代理店には入ってこないので並行輸入品を探すしかない、なんて話はザラなのでありますよ。

 Uさん程のコダワリをお持ちの方であれば、細かいスペックを調べ上げ、微細なる仕様までガッチリ決めているのが普通です。勿論、店に実車を見にお出掛けにもなるでしょう。しかしそれは、一般の方のように、どれにしようかなぁと漠然と悩みに行ったりするのではなく、事前に目をつけた特定のカラーの色味(いろみ)を実車で確認しようとか、実際に跨がってみてフレーム寸法を確定しようとか、気に入っている特定のボトルケージが装着可能かどうか現物合わせをしようといった、緻密なスペックの確認行為が主な来店目的だったりするのです。

 こうした場合、目的の仕様の在庫が無かったりしたら、さあ大変。ここまで重篤な物欲病に罹患してしまったUさんの様なマニアックな方は、要求スペックを妥協するなんて事は出来る筈もありませんから、実車在庫を求めて販売店をハシゴするしか残された道はないのです。

 それが無いくらいなら、むしろなんにも要りません。

 チューホフ著、沼野充義訳「かもめ」(集英社)からのお言葉です。スポーツ自転車のモデルチェンジは年一回。こうしたバージョンアップで特定の仕様が廃版になるなんてよくある事でありまして、特に2014年モデルが出揃う今の時期に2013モデルの購入を考えている場合など、急がないと目的の仕様の在庫がどこにも無いなんて結末になりかねません。迷ってる暇など無いのです。

 スペックの妥協が不可能だとすると、在庫切れの場合、結局買わないという選択を採らざるを得ない事になります。こうなってしまったら最後、物欲病は永遠に完治しないばかりか、自分の決断力の無さを悔いる日々を悶々と送らねばならないのです。こりゃ精神衛生上よろしくありません。ねねね、だから今買うしか無いんだってば〜、というのが物欲病患者の理屈。ふふふ。この気持ち、痛い程分かりますですよ。私もそうでしたもの。とにかくUさん、この度はブロンプトンM6Lデザートサンドのご購入、オメデトウ御座いま〜す!Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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