は自他共に認める活字中毒者でありまして、年間100冊を越えるペースで乱読を続けております。書籍は Amazon でも購入しますけれども、意識して定期的に書店を巡回するようにしています。Amazon
は推しの作家の新刊が出たら自動的に連絡が来て、ワンクリックで予約購入出来たりと、確かに便利なのは間違いないのですが、やはり実店舗でフロアを徘徊し、書店員さんの思いのこもったPOPやイベント棚を見ることで、新たな作家や作品との出会いの機会を得るのは、とても貴重だと思うのです。そしてそれは自分の為だけではなく、微力ながらも書店の存続にも寄与しているとも考えています。
普段は多摩センター駅の丸善書店か、立川駅のオリオン書房、同じく立川のジュンク堂辺りに出没しています。地方を中心に書店の実店舗が続々と閉鎖されていると聞きますが、私の住む東京近郊エリアも状況は同じ。ただ幸いにもまだ健在な書店がいくつか残っておりますから、書店難民にはならずに済んでおります。
しかしモノレールに乗らないと書店に行けないのは残念な点のひとつ。以前は徒歩圏内の高幡不動駅前に書源というしっかりした本屋さんが有ったのですが、残念ながら2011年1月に閉店となってしまったのでありました。書源高幡不動駅前店の店長は司書並の知識を持つインテリで、「たしかこんなストーリーだったような・・・」程度の曖昧な情報から、一発で書籍を特定したりするスーパーマンだったのですけれども、惜しい書店をなくしたものであります。ちなみに書源は、様々な店舗を閉め続け、2024年1月に、最後まで頑張っていた調布つつじヶ丘店の閉店をもって、完全に書籍販売から撤退してしまいました。
高幡不動駅の駅ビルに啓文堂書店が入っていますが、ここは京王電鉄の子会社で、書店と云うよりは大きいキオスクといった感じ。雑誌などが中心で、文芸作品のラインナップはある事はあるものの貧弱ですので、普段はあまり使いません。
実はこの啓文堂高幡不動店は、販売している書籍を、併設されたカフェ(タリーズコーヒー)で読む事が出来るサービスを2019年から始めました。「購入前にコーヒーを飲みながらじっくり本を選べる」と謳っていますが、これってどうしても違和感を覚えざるを得ません。だって啓文堂は古書店ではなく新刊書店なんですよ?他人が飲み食いしながら読んだ本を新品として売るなんて、納得いかないのは私だけではありますまい。
立ち読みまでなら慣例的に許容範囲としても、飲食しながらの「座り読み」を客に許容し、「普段あまり本を買わない層の方にも本を手に取って頂く」と明言する態度は、我々のような新刊書店で新品を購入し続ける正常な消費者を、余りにも馬鹿にした姿勢ではありませんか。「お前ら活字中毒者は本がないと生きていけないんだから、他人がコーヒー飲みながら読んで多少汚れた本でも結局買うんだろ?」と云われているようで、ちょっと腹が立ちます。
先日、都心に出る用事があって高幡不動駅に行ったのですが、電車内で読む本の在庫がちょうど切れていたので、仕方が無く普段はあまり利用しない啓文堂で、第171回芥川賞受賞作の松永K三蔵著「バリ山行」(講談社)を購入し、新宿行きの電車に乗りました。少し読み進めたところ、ページの間にパン屑が挟まっているのを発見。タリーズコーヒーではホットドックやサンドイッチも売っています。きっと誰かが飲食しながら「座り読み」をし、結果として購入しなかったモノを、たまたま私が購入してしまったのでしょう。新品の本を買ったのに嫌な感じ。
どうせそんなことだろうと思ってたさ、最初からな。
米澤穂信著「本と鍵の季節」(集英社)からのお言葉です。こういう形態のカフェ併設型の書店が最近流行っているようでありますけれども、これね、商売としてどうかと思いますぜ。新品を定価で買おうとしているお客を完全に馬鹿にしている。これって、車のディーラーが、試乗車として他人が散々乗り回した車を、新車として定価で販売するようなものではありませんか。
折角、実店舗に出掛けてそこで購入することで書店文化そのものを守ろうとしているのに、こうしたカフェ併設型の書店(購入前の本をカフェに持ち込めるタイプの店)って、自ら書店文化を潰そうとしてるとしか思えません。ちぇ、パン屑が挟まってる本買うくらいなら、Amazonで綺麗な新品を買えば良かったよ・・・。
【来週をお楽しみに】
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