の繁忙期は相変わらず続いておりますけれども、先日、その作業が一山超えた事もありまして、かみさんと二人でささやかな「お疲れさん会」をやろうという話になりました。ここのところ、一緒にご飯を食べる事すらままなりませんでしたからなぁ。お疲れさん会と申しましてもわざわざ外へ出掛けるような大層なものでは御座いません。家でちょっと一杯呑みつつ、一緒にゆっくりご飯でも食べようよ、という位の趣向であります。
ちょうど、クリスマスプレゼントとして貰った白州とボウモアがありましたので、かみさんは白州をお湯割りにしてグレープフルーツ・ピールを入れたモノ、私はボウモアのオンザロックスを頂く事にしました。
白州もボウモアも単一蒸留所産のいわゆるシングルモルトウィスキーでありますが、そのテイストは大きく異なります。山梨の白州蒸留所の白州は、割とフルーティな香りであまりクセがありません。使われている水はいわゆる南アルプスの天然水。炭酸水で割ってハイボールにしても、お湯割りにして柑橘類の皮などでアクセントをつけたりしても、美味しく頂けます。
対してスコットランドのアイラ島のボウモア蒸留所で作られたボウモア12年は、大麦麦芽をピート(泥炭)で燻す工程や、たっぷりと土中の泥炭質が溶け込んでいる水を仕込みに使っている事もあって、ピーティーでスモーキーな独特の芳香があります。通人はこれをストレートで楽しむと云いますけれども、私の場合、これに少しだけ水を差した際の芳香が好きですので、この日は、氷を溶かしながら呑むオンザロックスにしたという訳です。
そんな具合に、ささやかなる宴の準備をしておりますと、大学生の長男が帰って参りました。彼も一応は成人。折角ですからお酒を勧めてみる事に致しましたよ。今日は良いウイスキーがある事を告げ、どのように呑みたいかを聞いてみたのであります。
う〜ん、ボウモアなんて聞いた事無いけど、折角だからそれ呑んでみようかな。友達と居酒屋行くとほとんどチューハイなんだよね。ウィスキーは匂いがキツくて呑みにくいから、コーラで割って呑もうかなぁ。
それは天使が空から降りてきて美しい音楽を奏でようとしている時に、テレビの再放送番組をつけるようなものじゃないか。
村上春樹著「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」(新潮文庫)からのお言葉です。私が学生の頃、ウィスキーをコーラで割るコークハイという呑み方が確かに存在しておりました。お酒が苦手な方、主に女性向けの飲み物だったように記憶しています。あれから30年も経つのに、いまだに大学生はコークハイを好むモノなのですね。いずれにしろ、ボウモア12年をコーラで割るなんて暴挙を許す訳にゃ参りません。長男には150円持たせて、近所のセブンイレブンにチューハイを買いに走らせたのでありましたとさ。
【つづく】
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