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  今週のお言葉  

 概に断定は出来ませんけれども、サイクリングに行った事の無い人ほど、登り坂に対するアレルギーと申しますか、坂道を嫌う気持ちが強いように思います。うちのかみさんなんか、まさしくそう。サイクリングに誘っても「坂があるから行きたくない」というのが、彼女の主な断りの理由でありますからね。

 私は以前、マウント富士ヒルクライムというイベントに出場した事が御座います。富士吉田の北麓公園をスタートし、富士スバルラインをひたすら富士山五合目まで登るだけのこの自転車レース。走行距離24Km、ゴール地点までの標高差は1,250mであります。私は至って凡庸な記録しか残せませんでしたが、自分なりに全力を出し切って、大きな達成感を得る事が出来ました。

 こうしたお話をしますと、自転車に乗らない方ほど「うわ〜信じらんねぇ。自転車でスバルライン登って何が楽しいのさ?」とか「やだやだ俺なら金貰ったとしても絶対やらないね」といった否定的な反応をなさいますが、私を含め多くのローディーは、明らかにマゾヒスティックな性癖を持ち合わせております故、登り坂はそれほど苦にはならないのであります。勿論、物理的な心肺系へのストレスは相当なものですよ。しかし頑張っている自分に酔うと云うか、何かこうストイックな心に支えられて、意外に頑張れてしまうものなのでありました。

 ところで、峠道と対局にあるのが、多摩川サイクリングロードでありましょう。私の住む日野から、羽田や川崎大師に向かう際、私は多摩川サイクリングロードをよく使います。川崎大師までは往復80Km。ミドルサイクリングの行き先としては中々の好適地であります。しかもこのルートは信号がほとんど無く、楽に走る事が出来ます。自転車は走り出しから巡航速度に乗るまでにエネルギーを使いますから、信号によるストップアンドゴーが無いと相当楽なのでありますよ。また多摩川の下流域では、傾斜はほとんど無いに等しい位に平坦ですので、川崎大師までは割と簡単に到着出来る筈なのです。

 そのはずなのに、ちっとも前に進まない。

 小嶋陽太郎著「火星の話」(角川書店)からのお言葉です。遮蔽物が無くだだっ広い多摩川の河川敷の土手を通っている関係上、風の影響をもろに受けやすい道でもあります。平坦な多摩川サイクリングロードも風が吹くとその状況は一変致します。俗に「多摩サイ峠」などという呼び名が存在する程。これは多摩サイで一旦風が吹けば、走破する為には峠越えに匹敵するような労力が必要とさせる事に由来しているのだと思われます。

 向かい風は本当に辛い。サイクリングに於いて私が最も嫌っているのは、まさにその向かい風に他なりません。自転車走行における空気抵抗は、労力のうちのかなりの割合を占め、向かい風か追い風かの違いは、巡航速度に多大な影響を及ぼします。確かに登り坂は苦しいですけれども、登った分必ず下りが存在しますし、そもそも登っているのが目に見えますので、覚悟がつけやすいのであります。対して、向かい風はそれがいつまで続くのか全く不明です。すぐに風が止むかも知れませんし、まだまだずっと吹き続けるかも知れません。ゴールが見えない作業というのは、精神的に疲弊させられるものであります。

 そう云えば今までに何度か、日野から羽田まで往復して結局一日中向かい風だった事がありました。私の進行方向を察知して、神様が向かい風を吹かせ続けてくれたのでしょうか。全くもってサイクリングの神様は、意地悪なのでありました〜。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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