日、こむカーにこむぎを乗せ、立川の昭和記念公園のドッグランに遊びに出掛けた時のお話です。この公園のドッグランはとても広く、綺麗に整備されていて、小型犬専用エリアとか、静かに遊ぶエリアとか、ボール遊び可の無制限エリアなどに分かれています。利用の為には、狂犬病の予防接種証明書と犬の三種混合ワクチン接種証明書を提示して、犬専用の入場カードを発行して貰う必要がありますから、病気の犬からの感染の心配はありません。こむぎは勿論カードホルダであります。何しろドッグランが大好きな、昭和記念公園のヘビーユーザでありますからなぁ。

　無制限エリアには既に5頭程の犬が遊んでいました。二重扉を抜けて中に入り、、こむぎのリードを外してやります。こむぎは普段ネコ2匹と一緒に過ごしているからでしょうか、割と社交的な性格で、大概のワンちゃんと楽しく遊ぶ事が出来ます。滅多に吠えませんし、噛んだりもしません。

　犬同士の初対面の挨拶は一風変わっていて、まず相手のお尻の匂いを嗅ぎ合う事から始まります。この匂いで相手を認識しているのかも知れませんね。取り敢えずその場にいたワンちゃんたち全員と挨拶を済ませ、無邪気に追いかけっこを始めました。ワンちゃんの飼い主たちは、私も含め壁際に立って、自分の犬の動向を見ています。まるで夢中で公園で遊ぶ幼稚園児らを見守る親たちのようであります。

　犬同士の遊びですので、相手の上に乗ったり、キャンというまで追い回したり、他人のボールを取ったり、ある程度のやんちゃは当たり前。そもそもドッグランとはそうやって犬を自由に遊ばせて犬同士の社交性を身につけさせる、いわば学習の場、わんわん幼稚園でもあるのです。本気の噛み合いが始まったりすれば、勿論止めに入りますけれども、私を含めしょっちゅうドッグランに来ている飼い主は、犬同士の多少のいざこざなんぞ全く気にしないものであります。

　ところがこの日は、おそらく今日がドッグラン・デビューと覚しき飼い主の方が居て、その方のワンちゃんが他の犬にちょっかいを出す度に「あれはお宅様のワンちゃんですか。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」と謝り回っているのであります。更に一々「ダメじゃないか他の仔のボールを取っちゃ！」と、自分のワンちゃんをつかまえては叩いて叱るのです。犬にしてみれば、楽しく遊んでいるのにいきなり叩かれても、意味が分からないでしょう。しまいにゃ折角のドッグランだというのに、リードを繋いでしまって、「皆様にはうちの犬がご迷惑をお掛けしました。もう紐で繋ぎましたから大丈夫です。本当に申し訳ありませんでしたっ」と大声で謝る始末。

　いいえ、そんなの、どうでもいいんですよ。

　さだまさし著「ラストレター」（朝日新聞出版）からのお言葉です。犬同士の事なんですから、そんなに気にする事じゃありませんよ、と声をお掛けしても、いえいえいえいえと謝るばかり。私もこれ以上関わるのは、ちと面倒でしたので、結局そのまま放っておきました。ま、あと2〜3回も来ればドッグランの流儀が分かるでしょ。というか、普通、その場の雰囲気ですぐに理解出来ると思うのですが・・・。折角ドッグランまで来ていながら、叩いて叱られてリードに繋がれて、散々なワンちゃんのお話でありました。

　当のこむぎは1時間半も駆け回って、大いに満足した様子。ドッグランの後は私と一緒に公園内を一周散歩して、一緒にホットドッグを買い食いして（こむぎの分は勿論カラシ抜き）、こむカーに乗って意気揚々と帰路についたのでありました。

【つづく】

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