さま、輪行袋ってご存じでしょうか。折り畳んだ自転車を入れるバッグの事であります。一見大きく見えるロードバイクでも、前後輪を外して輪行袋に入れますと、肩に掛けて駅の中を移動出来るほどコンパクトになり、鉄道での移動が可能になります。バック自体は折り畳むと水筒くらいの大きさになるので、サイクリングの邪魔になりません。自転車で出掛けているにも関わらず電車が利用出来るというのは、一種、宇宙船におけるワープ航法に近い利便性であったり致します。何しろ、自転車としての行動範囲を遙かに超えて、途中を一気にすっ飛ばす事が出来ますからなぁ。
しかし、ロードバイクの輪行は良い事ばかりではありません。前後輪を外してフレームと束ねますので、接触部分に傷がつくリスクを覚悟しなければならないのです。勿論、周到に養生すればかなりの割合で傷は防止出来るでしょう。しかしその事は、養生用の荷物が増えてしまう事を意味します。なるべく荷物を減らしたいロードバイクで輪行サイクリングに出掛けるという行為には、傷問題という悩ましさがついて回るのでありました。
私の場合、こうした心配をせずに輪行を楽しむ専用自転車として、折りたたみ小径車のチビ号を購入した訳であります。チビ号はロードバイクと異なり折り畳む事を前提に設計されていますので、輪行時の傷つきはあまり心配しなくて大丈夫。チビ号さえあれば安心して輪行サイクリングに出掛けられるのであります。
ところで輪行袋は、実際に輪行しない場合でも、持っているだけで安心という保険的効能を有しています。この安心感は時として相当大きなものになったり致します。ま、そりゃそうですわな。疲れちゃったり雨が降ってきたりしたら、いつでも電車で帰れるのですからね。という訳で我がチビ号のシートポストには、常に輪行袋が括り付けられているのでありました。いざとなったら電車で帰ってくれば良いやという絶大なる安心感故、意外に遠くまで出掛けられるものであります。その割には実際には輪行せず、自走で帰ってきてしまう事もしばしば。保険的安心感があるからこそ、臆せず大胆な行動がとれるという訳です。
ウルトラマンは、なんでもっと早よスペシウム光線を使わへんのや。
東野圭吾著「あの頃ぼくらはアホでした」(集英社)からのお言葉です。私が輪行というオプションを出し惜しみしているのではないのと同様に、ウルトラマンもスペシウム光線をいたずらに温存している訳ではないでしょう。とは云え、スペシウム光線に圧倒的破壊力があるからこそ、落ち着いて怪獣に対峙出来ている事も確か。ウルトラマンにはカラータイマーという制約があり、地球上で戦えるのは、たったの3分間に限定されています。スペシウム光線という圧倒的な武器があって初めて、カラータイマーが赤点滅を始めるまで、キックやパンチといった通常兵器で落ち着いて戦えるのであります。
日暮れまでに帰ってこなければいけない、という制約の中でも、落ち着いてノビノビとサイクリングを楽しむ為に、輪行袋による保険的安心感は絶対的であります。輪行袋って、ある意味、スペシウム光線級の威力を持つアイテムなのでありました。う~む、ロードバイクのピンクちゃんにも輪行袋を常備しちゃおうかなぁ・・・。
【つづく】
「今週のお言葉」の目次に戻る
「やすなべの目次に戻る」