日、URIBOZのともちん氏が、インフレータ(空気入れ)を持たずにサイクリングに出掛け、その事に気付いた瞬間から大層不安になって、その日一日中ビクビクであったお話をして下さいました。
ロードバイクにお乗りにならない方にご説明申し上げますと、ロードバイクのタイヤはすごく細く、しかも軽量化の為に非常に薄いチューブを使っているものですから、ママチャリなどの実用車に比べてパンクのリスクが何倍も高いのです。そこで出先でパンクしても立ち往生しないように予備のチューブと携帯空気入れを持って出掛けるのは、ロードバイク乗りの常識なのでありますよ。
いざという時の為に重装備で出掛けてしまう話を以前させて頂きました。やはり根が臆病で小心なのでしょうなぁ。装備が貧弱だと不安になってしまいます。
去年の秋頃のお話で御座います。私は自転車で宮ヶ瀬に向かっておりました。甲州街道を西進し大垂水峠を越え、相模湖からR412を通って三ヶ木を右折、更に青山を右折して一旦道志街道に入り、ヤマザキデイリー手前から宮ヶ瀬に登るルートです。ここは割と頻繁に訪れる通い慣れた道。この日は宮ヶ瀬の蕎麦屋、山登で山菜蕎麦を頂こうという計画だったのでありました。
鳥屋中学校のところまで登ってきました。ここまでくれば宮ヶ瀬湖は目前。お腹も減って参りましたよ〜。山登は外にテラス席を持っていますので目の前に自転車を停めて食事する出来ます。しかし大切なピンクちゃんにいたずらをされたら嫌ですから、いくら目の前に駐輪しているとは云え、勿論チェーンロックはガッチリ掛けますぞ。チェーンロックはいつもツールバッグに入れてあります。坂を登りながらふと何気なく、シート下のツールバッグを手で確認してみました。
え?!ツールバッグが無い!!そうか、しまった!!!前日に自転車を掃除した際、ツールバッグをシートピラーから外して、そのまま積み忘れてしまったのでした。という事は・・・。交換用のチューブも工具も何も持っていない状態で、私は宮ヶ瀬まできてしまったのであります。どひゃ〜!パンクしたらどうしよう!!これは大変です。
困りました。不安で不安でたまりません。そんな遠くではないと云え家からは40Km以上来てしまっています。パンクしても修理出来ないし押して帰るには遠過ぎます。しかも所持金は2,000円程度。だって蕎麦食って帰るだけの心算でしたからね。パンクしないようにしなくちゃ。すげ〜気をつけなくちゃ。
路肩には割と細かいゴミが落ちていて、それがパンクの原因となり得ます。あまり道路の端に寄り過ぎないようにしながら、ソロソロと宮ヶ瀬に到着しました。先ほどまでの解放感やウキウキ感はどこへやら、パンクや故障に対する不安で一杯です。
しかしよくよく考えてみますと、幾ら事前に心配したところでパンクの確率が減る訳ではありません。パンクしたらしたで、恥を忍んでまわりのサイクリストに工具をお借りすれば何とかなるでしょう。もし本当にどうしようもなくなったら、かみさんに電話して車でピックアップに来て貰うか、最悪、タクシーで帰っても良いのです。いずれにしろ、クヨクヨしたところでパンクのリスクは増えも減りもしないのであります。だとしたら、折角楽しいサイクリング出掛けているというのに、クヨクヨするだけ損ではありませんか。
この理論に従い、ぼくは困らない事にした。
森見登美彦著「ペンギン・ハイウェイ」(角川書店)からのお言葉です。砂漠のど真ん中で命の危険に晒されている訳でもなく、冷静に考えれば大したリスクでは無いのでありました。状況って心の持ち方一つで変わってしまうものなのですねぇ。この日は山登で山菜蕎麦を美味しく頂いた後、橋本を通って戦車道経由で無事帰って参りました。
それにしても次回からは、きちんとサドルバッグを積んだか再確認を怠らないようにしようっと。
【つづく】
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