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  今週のお言葉  

 

 かつて私はオートバイの免許を取得し、カワサキのバイクに乗り始めました。時は1980年代。まだ若かりし学生時代の話であります。猫も杓子(しゃくし)も自動二輪免許を求めたあの頃。いわゆるバイクブームと呼ばれていました。ホンダ、カワサキ、ヤマハ、スズキの各社からは矢継ぎ早に新型がリリースされ、それが飛ぶように売れていたのであります。

 あの頃あれだけ出回っていたオートバイは、一体どこへ行ってしまったのでありましょうか。ブームが終わった現在でも、大型オートバイを所有しそれに乗り続けている私は実はレアケースなのでありまして、ほとんどの方はバイクを降りてしまわれたと聞きます。

 バイクブームだからバイクに乗り始めたのか、否、ブームなど関係なくバイクが好きだから乗り始めたのか、と問われれば、後者と答えたいのは山々ですし、そう信じてもおります。しかし、バイクブームだったからこそ、興味を引くだけの情報が巷に溢れていたとも言えるのです。ブームが存在した以上、ブームと全く無縁だったとは言えますまい。

 禁煙をきっかけに太ってしまうのを防ぐ為にマウンテンルック車を購入した時点では、ロードバイクの事など全く頭にありませんでしたし、恥ずかしながら、そもそも巷でロードバイクブームが騒がれている事すら知りませんでした。私が段々とロードバイクに傾倒していく様は、「自転車に乗って変態になろう」をご覧頂くとしまして、かつてのオートバイブームの時と同様に、ロードバイクブームの到来と時を同じくしてロードバイクに乗り始めたのでありました。

 ブームのようだしちょっとロードバイクに乗ってみようかな。こういうきっかけで乗り始めた訳では決してありません。単に巷のブーム到来と、私の自転車へのモチベーションの高まりが一致したに過ぎないのです。でも、他の方から見ればそうは感じられないでしょう。Yasって意外と軽薄だなぁ。ブームを追い求めてばかりいるよ。そうお考えの方も多いでしょう。嗚呼、そうではないのに。実は今では、この軽薄短小なロードバイクブームに乗って取りあえずロードバイクを買っちゃったけど全然乗らないという人々を、蔑むとまでは云わないまでも、決して肯定する気にはなれない心持ちだというのに。

 最も賢い生活は一時代の習慣を軽蔑しながら、しかも、その又習慣を少しも破らないように暮らすことである。

 芥川龍之介著、「河童」の中のお言葉です。ブームだからそれに乗ったという人も確かに存在するでしょう。そしてこうしたファッション感覚で始めた人々の多くが長続きせず辞めていく。しかしそういう方々は実は意外に少数派なのではないでしょうか。ブームを構成し維持し続ける人々の多くが「自分はブームに乗っかって始めた訳じゃない」と信じていると思うのです。

 部品供給の面や、法整備の面から考えますと、この「ブーム」は消費者にとっては非常に便利であります。ちょっとした改造部品の入手のしやすさは、特筆に値する程。ただこういう時期は新しい部品規格、例えばBB30とか11速化とか、も乱発されますので、部品互換を維持する知識の為にも雑誌の定期購読は必須なのでありますがね。

 自転車業界の活況に比べ、オートバイのサードパーティ製部品ときましたら、流通量はかつての十分の一にも満たないんじゃないかなぁ。あると便利なステー類も、結局、市販品には見つからず、高価いお金を払って知り合いの工場で旋盤で削りだして貰ったりして、結構物入り。でも趣味のモノですからね。逆に一品モノの方が所有欲を満たしてくれたりする訳であります。いやはや市場動向に関わらず、(やまい)膏盲(こうこう)()るという私の所作(しょさ)は、更なる昂進の一途を辿るばかりなのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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