ママチャリでも良かったのですが、毎回々々かみさんの自転車を借りる訳にも参りませんから、自分用の自転車を買おうと思い立ちました。あまり深く考えず、見た目優先で安〜いマウンテンバイク、いわゆるマウンテン・ルック車を購入し、近所を走っていたところまでは、いたって幸せで御座いました。 ところがママチャリに比べれば非常に軽快感のあるこの自転車も、多摩川サイクリングロードでは、他の自転車に抜かされてばかり。明らかに私より10歳以上年長とおぼしき方の運転する自転車を、抜かす事はおろか、ついていく事さえままならないのであります。 いかん。これはいくら何でもいかん。別にスピードを競う為に自転車を購入した訳ではないのですが、抜かされてばかりという状況はあまり楽しいものではありません。「それなら練習して体力をつければ良いじゃねぇか」というご意見はもっともで御座います。でもね、体力の差だけではないようにも思えるのです。だって、こっちは汗だくで漕いでいるにもかかわらず、明らかに "流して" 乗っている自転車についていけないのですョ。構造的・機械的な相違があると考えるのが自然でしょ? 近所の自転車量販店「あさひ」に出向きまして相談してみましたところ、「そりゃこんなゴッツいブロックタイヤじゃ、走行抵抗も相当なもんですぜ」と指摘されまして、タイヤを交換してみる事に致しました。パナレーサーのクローザー 1.25-26HE であります。これは元々装着されていたブロックタイヤと比較しますと相当な細さであります。見た目で云うと半分以下のように感じます。勿論チューブもタイヤに合わせた細いモノを購入し、タイヤを交換してみたのでありました。 あくまでも半信半疑でのタイヤ交換だった訳ですが、なんとなんと、これが劇的に漕ぎが軽い。今までのタイヤの走行時のような「ゴゥ〜」というロードノイズがなく、新しいタイヤはとても静かです。それもその筈、幅 1.25 インチという細さだけでなく、600KPa もの高圧に保たれている為、その接地面積たるや数平方センチしかないのであります。これは標準的な乗用車の空気圧の約2.5倍もの圧力なのですよ。まさにパンパン。
嬉しい誤算であります。そうかそうか。体力の問題ではなく機材の問題だったのか。多摩川サイクリングロードを上流に向けて羽村の取水堰まで漕いでいきますと、だんだんのどかになっていく風景の移り変わりも堪能出来ますし、そもそも周りの自転車にひけを取らないスピードが出せる事も、楽しい要素なのであります。 さてさて、そうこうする内に、タイヤの不具合が気になり始めました。実は空気漏れが激しいのであります。朝パンパンに空気を入れても夕方にはユルくなってしまう。自転車のチューブはブチル製ですから多少の空気漏れは仕方がありません。それにしても、これは幾ら何でもおかしい。チューブをはずして水バケツを使って空気漏れ箇所を探索しますが、穴などはどこにもあいていない。そもそも前後輪ともに起こる現象でありまして、状況的にはこれも構造上の問題である可能性が高いと判断されます。相談出来る仲間もおりませんので、仕方なく、また、あさひに相談に参りました。 私のマウンテンバイクのタイヤのバルブは、ママチャリと同じタイプのモノで、いわゆる「英式バルブ」であります。このバルブは汎用性が高い反面、構造的に高圧には耐えらないとの事。それに対し、スポーツ自転車の大半は「仏式バルブ」を採用しており、非常に高圧に保てる反面、ママチャリとの互換性はなくなり、普通にホームセンターで売っている空気入れは使えなくなるとの事。う〜ん悩ましい。しかも仏式は英式に比べてバルブの径が細く、英式バルブ用の穴があいている私のマウンテンバイクではガタついてしまうので、専用の英仏変換ナットが必要になるというではありませんか。空気圧一つで、全く物入りな話であります。 結局仏式バルブのチューブに換装する事にしました。1.25 のスリックタイヤはそのまま使用しますが、チューブはバルブと一体なので新品に交換です。英仏変換ナットも購入しました。空気入れも仏式専用品を購入しました。 あれ?元々健康の為に自転車に乗ろう、自転車だったら安いしネ、というのが当初のコンセプトであった筈なのですが、どうもおかしい。ブロックタイヤの 1.25 スリックへの交換に始まり、仏式専用空気入れまで合わせますと、大体マウンテンバイク本体の値段とあまり変わらない額が掛かっています。なんじゃこりゃ。 今思えば、この金銭感覚のずれこそ、変態への道の第一歩だったのでありました。
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