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  チビ号のタイヤ交換  

 

 盆休みに、小径折りたたみ自転車のチビ号でこむカーを牽引して、犬のこむぎと昭和記念公園に遊びに行った帰りの事。何だか後輪がヌルヌルと変な動きをします。停止してタイヤを確認すると、案の定パンク。こむぎをこむカーに乗せたまま歩道に上げて、パンク修理をします。よくよく見るとタイヤの側壁に傷がついているではありませんか。あちゃ〜、こりゃ単なるパンク修理では済まず、タイヤ交換しなければならないパターン。しかしこの時は出先と云うこともあり、当然、予備のタイヤまでは持ち合わせていませんから、取り敢えず応急処置を施す事にしました。

 まずはタイヤからチューブを引き出し、パナレーサー製のイージーパッチで穴を塞ぎます。新品のチューブも携帯していましたが、タイヤも裂け気味ですからまたすぐにパンクする恐れがあり、新品チューブの使用は避けたという訳です。あくまでも応急処置ですからね。裂けたタイヤは、裏側からママチャリ用の分厚いパッチを糊付けし、これ以上裂ける事を防ぎます。作業中、こむぎは特に嫌がる様子もなく、静かに良い子で私のパンク修理作業を眺めていましたよ。道端での作業は約10分で完了。そのままこむカーを牽引して程久保基地に帰投しました。

 空気は全く洩れたりせず応急処理としては完璧でしたが、やはり一度側壁が傷ついたタイヤを使い続けるのは、あまりに危険過ぎるでしょう。そこで近所のワイズロード府中多摩川店にチビ号を持ち込んだのでした。しかし今思えばこれが間違いの元でありました。チビ号を持ち込まずにタイヤとチューブだけを購入して自分で組むか、腕の良いマングローブバイクスに持ち込むかすれば良かったのです。

 HE18-1.50というタイヤはかなり特殊なサイズです。プロショップであるマングローブバイクスには、こうした街乗り車用の在庫が無いのではないかと勝手に考えたのでありました。取り寄せて貰うと時間も掛かります。それにそもそも、ブルぺや競輪などのレースサポートを中心に動いている超多忙なマングの大将に、小径車のタイヤ交換作業なんぞ頼める筈もありませんしね。

 嗚呼、やはり部品だけワイズロードで購入し、自分でタイヤ交換すれば良かったのです。魔が差したとしか申しようがありません。既に夕方になっていて、部品を調達して程久保基地に戻ってタイヤ交換しようにも夜になってしまうのは確実。ウッドデッキで作業しても蚊に刺されるでしょう。タイヤ交換工賃1,000円程度であれば大した出費じゃないし、面倒くさいから自転車屋さんに頼んじまえ、と考えちまったのであります。

 結果としてワイズロードにはチビ号に適合するHE18-1.50タイヤの在庫が無く、チビ号を預ける事になりました。ここで私は2つ目のミスを犯しました。タイヤの銘柄を指定せず、ワイズロードの店員に一任してしまったのであります。ロードバイク用の700C23タイヤには、高価なモノから廉価なモノまで幅がありますが、小径車用タイヤにはそれほど多くのバリエーションがありません。ロードのように高い性能を求めるものでもありませんし、ワイズロードに任せて、最も早く入荷するモノを装着して貰おうと考えたのでした。今考えれば、この時点で「シュワルベ以外の銘柄で」とオーダーしておくべきでした。

 3〜4日して、ワイズロードからタイヤ交換が完了した旨の電話があり、日曜日のお昼頃、受け取りに行きました。この日は受け取ったその足でチビ号で吉祥寺に出掛けるつもりでいたのですが、納品されたチビ号を見ると、後輪タイヤがまっすぐ嵌まっていない!しかもタイヤの銘柄はシュワルベではありませんか!!

 ロードバイク用のタイヤはWO、対してマウンテンバイクや小径車にはHEという規格が採用されています。ようはリム形状の違いなのですが、HEタイプの方がタイヤとリムがきちんと掛かりにくいという特性が御座います。いわゆる「ビードが上がりにくい」という性質。タイヤの縁とリムの縁が正しい位置で引っ掛からない状態の事を云います。しかもシュワルベはHEタイヤの中でも特にビードが硬く、ビードが上がりにくい事で有名なのであります。

 それにしてもこれはイタダケません。曲がりなりにも自転車屋さんが工賃を取ってタイヤ交換を行なって、ビードがきちんと上がっていないとは。しかも急いでやって貰ったのではなく、あくまで預かり作業。タイヤがきちんと嵌まっておらず、つまりは円形になっていない訳ですから、このまま走ってもデコボコ跳ねてしまいます。当然の事ながらその場でクレームを入れ、すぐにタイヤを嵌め直して貰う事にしました。

 さあ、ここからが大変。出来上がりを店内で待っていたのですが、まさに待てど暮らせど出来上がらないのです。確かにシュワルベのタイヤは硬い。硬いタイヤは手で揉んだり、ビードワックスや石鹸水で誤魔化して嵌めるしかありません。プロもアマも無いのです。しかしプロの自転車屋さんとしての矜持(きょうじ)が、お客の前でギブアップする事を許さなかったのでしょうな。さんざん待たされて結局どうしても上手く嵌らず、私に「もう良いでしょう。シュワルベは元々硬いですし、この個体は特にタイトだったようです。別の銘柄のタイヤにした方が良いのではありませんか?」と助け船を出されるまで、店員さんの奮闘は続いたのでありました。結局、一旦お金は全額返金して貰い、その上でチビ号を預かって、改めてシュワルベ以外の別のタイヤを発注して組み直す事に落ち着いたのでした。

 レシートを確認しますと最初に受け取ってお金を払ったのが1時27分。すぐに不具合に気付いてクレームを入れて、結局諦めて返金手続きをしたのが3時53分。実に2時間半近くもワイズロードに居て、折角の日曜日が完全に無駄になっちまったというお話でありました。あ〜ちかれた。

 あ、先ほど、「・・・誤魔化して嵌めるしかありません。プロもアマも無いのです」と申し上げましたが、マングの大将は違います。あのグローブのような手で、きっと何事も無かったかのように、霊長類最強の器用さをもってスルリと嵌めちまうに違いないのであります。そこまで分かっていても、街乗り車のタイヤ交換作業なんぞでマングの扉を叩く訳にも行かず、チビ号は来週の日曜日までワイズロード預かりと相成ったのでありました〜。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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