里の宿、ブルーイングリーンは快適でありました。美味しい食事、ゆったりとした雰囲気。ホスピタリティそのものであります。私のようにセカセカ宿泊するのではなく、ホントはゆっくり連泊して「何もしないで過ごす」には最適の宿かも知れませんね。
ブルーベリージャムをたっぷり塗った厚焼きトーストとサラダとオムレツのアメリカン・トラディショナルな朝食を頂いて、ユルユルと出発です。今日も良い天気。さあ、頑張って漕ぐぞ〜。来た道をそのまま帰るのも芸がないですから、今日は甲府から御坂を越えて河口湖に出て、山中湖から道志街道経由で帰投する計画であります。
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山伏峠は4月だと云うのに積雪が |
国道141号を一気に下ります。昨日ヒーコラ登ってきた道も、下るとなると早い々々。あっという間に須玉インターを過ぎ、韮崎までやって参りました。竜王立体から国道52号に左折し甲府の中心地を目指します。甲府の中心街は割とゴミゴミしていて、金手や善光寺の辺りでは、国道だというのに道路がクランク状に曲がっています。聞いた話によりますと、戦国時代に道普請をした際、敵の攻撃を阻害する目的で意図的に道をクランク状に設えたのだそうでありまして、城下町ではこうした普請はいわばセオリーとの事。そういえば松本城近くの上土通りもクランク状になっていましたっけ。
石和の遠妙寺のT字路を右折します。笛吹川を渡り中央道の高架をくぐると、道は緩い登りに転じます。清里はまだ冬の様相でしたが、石和はすっかり春。笛吹川の桜は六分咲きと云ったところでしょうか。さていよいよ、すり鉢状の甲府盆地を出て御坂に向かいます。この道は今は県道311号となっていますが、元々は国道137号でありました。いわゆる「御坂みち」であります。現在の国道は、中央道一宮御坂インターチェンジに接続する形で北東側に移動しています。この旧道沿いには昔ながらのブドウ農園や桃農園が軒を連ねています。子供の頃ここにブドウ狩りに連れてきてもらった事を思い出しましたよ。
それにしても、つくづく甲府盆地というところは自転車にとってやっかいな地形でありますなぁ。東西南北どこから山梨に入っても、道路は結局甲府に通じています。甲府は山梨の経済の中心であると同時に、陸運のジャンクションでもあるのです。その甲府は甲府盆地の真ん中にありますから、一旦山梨に足を踏み入れたら最後、どこへ行くにもこのすり鉢状の甲府盆地の壁を越えて行かねばならないのであります。今日にしましても、スタート地点が標高1100m超の清里だというのに、一旦すり鉢の底に降り立った後、御坂の標高1000mを目指して登り返さねばならないという訳です。エネルギー効率の悪い事この上無しであります。
ま、地形に文句を云ってもはじまりません。御坂みちをトコトコと進んでいきます。今の季節はブドウも桃もトウモロコシもシーズンオフですから、沿道のお店はほとんどが閉まっています。新しく出来た国道137号上黒駒バイパスには入らず、敢えて旧道を進みます。昔の街道はクネクネして多少遠回りな反面トラックがほとんど通りません。自転車で進むにはこちらの方がはるかに快適なのであります。
道場の部落を過ぎる辺りから斜度がきつくなってきました。汗がボタボタ滴り落ちます。心拍数が上がります。足を着かない事だけを意識しつつトコトコと登ります。それにしてもこの街道ではロードバイクに全く出会いません。この近辺の方は自転車に乗らないのかしらん。
戸倉の集落を過ぎて、旧道は上黒駒バイパスと合流します。ここから先は登り二車線下り一車線の三車線道路。登坂車線の路肩をトコトコと進みます。脇をトラックが尋常ならざるスピードで抜いていきます。沿道のお店は全て閉まっているし、自動販売機すら無く、休む事もままなりません。夏を過ぎれば沿道にはブドウや桃を売るお店や焼きモロコシの屋台などがたくさん出て賑やかなのですがね。カムイ御坂スキー場を横目に見ながらトコトコと高度を稼いでいきます。
御坂トンネル分岐までなんとか登って来ました。結構疲れましたよ。右ヘアピンに沿って進めば御坂トンネル、左の側道を直進すれば、旧道御坂峠です。今日は折角だから御坂峠の天下茶屋に行きたいのですがね。しか〜し、あれれ?!側道には看板が出ていて「旧道御坂峠は道路工事中の為通行止め」の表示が。一旦御坂トンネルを抜けて向こう側から折り返せば天下茶屋には行けるようなのですが、わざわざ回るのもなぁ。という訳で今回は天下茶屋は諦めて、御坂トンネルを抜けて河口湖に向かう事にしました。
御坂トンネルは昨日の笹子トンネルと打って変わって、中は暗いは、道幅は狭いは、路面は荒れているはで、自転車にはかなり過酷なルートであります。トンネル入り口のチェーン着脱所で点滅灯を確認します。ここがちょうど標高1000m。標高1100mの清里を出て標高260mの甲府盆地の底に下りてから、再度標高1000mまで登ってきたという訳です。ふぅ。何て非効率なお話なんでしょ。しかもこのトンネルを抜けると標高840mの河口湖まで下って、そこから標高1000mの山中湖までダラダラと登り返すのであります。山梨ってホントに平らな場所が無いところですなぁ。ま、そこがマゾヒスティックな私にとっては魅力でもある訳ですがね。ふふふ。
御坂トンネルを無事通過した途端に、外気の寒さが身に沁みます。何じゃこの寒さは!トンネルを隔てて明らかに気候が異なっています。冬用の手袋をしているというのに手が悴んでしまいます。富士急電鉄富士山駅の脇を右折し、金鳥居をくぐって、突き当たった国道138号を左折。標高1000mの東富士五湖道路 山中湖インターチェンジまで緩やかな登りが続きます。
山中湖目前というところで、何と雪が降ってきました!4月だというのに何て寒さでしょうか。そうこうするうち、あっと云う間に横殴りの吹雪に。コンビニに避難して様子を見ますが、雪は一向にやみそうもありません。これでは風邪を引いてしまいます。この先の路面状況も心配ですしね。スマートフォンで天気予報を調べてみますと、この雪は夜半にはやんで、明日(4月8日(日))は晴天の予報であります。一時的な雪とは云え、このまま帰宅を強行するのは危険でありましょう。下手すりゃ山伏峠辺りは積もる可能性すらあります。それほどの降りなのです。
以前、マウント富士エコサイクリングの際にお世話になった民宿、湖里清流荘に電話してみますと、今からでも泊まれるし食事もOKとの事。良かった助かった〜。地獄に仏とはこの事であります。という訳で、急遽、山中湖に宿泊する事に致しました。早速熱い風呂に入ります。くぅ〜、生き返る〜!風呂から上がって外を見ますと、道路は濡れているだけですが植木や芝生にはうっすらと雪が積もり始めています。やはり帰宅を強行せず一泊する事にした判断は、正解でありました。
翌朝は快晴。とはいえやはり空気はかなり冷たく感じます。しかし今日は山中湖から道志街道経由で帰宅するだけなので、楽勝です。下り基調ですし距離も70Km程しかありませんからね。標高1100mの山伏峠は、案の定、雪が積もっていましたよ。気温は1度。寒い々々。山伏峠から道の駅道志まで、一気に下っていきます。風を受けて体が冷えきってしまい、堪らず道の駅に逃げ込みました。道の駅道志の標高は700m。たった400m程下っただけなのに、日向はポカポカと暖かく、春の陽気を感じます。ここまで来れば勝手知ったる道。事故も怪我もなく、お昼過ぎには万願寺基地に帰着する事が出来ました。
全行程307Km、累積獲得標高4092m。辛楽しい、早春の二泊三日サイクリングでありました〜。
【つづく】
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