がオートバイで道の駅道志にお散歩に出掛ける際、ほとんどの場合、往路は秋山街道を用います。秋山街道とは、藤野から禾生に抜ける山間の道路の事。リニアモーターカー実験線と並行して走る道です。東京西部から山梨東部に向かう道は主に3本あり、北側から甲州街道(国道20号)、秋山街道(県道517号)、道志街道(国道413号)の順で、それぞれ平行に、東西に延びています。
甲州街道はこの地域の幹線で、中央自動車道の渋滞を嫌った車が高速を降りて使う事が多い為、断続的に渋滞しますし、八王子や相模湖など街場の駅前を通過するルートですので、あまりバイクツーリング向きではありません。コンビニとガソリンスタンドはたくさんあるけどね。
道志街道は「ヤエーの聖地」などと呼ばれ、マスツーリングの方が多く、早朝からそれなりの数のバイクが出ています。マスツーリングの方は固まって縦長で走る事が多く、またインカムでの会話に気を取られている人もおり、抜かすのが一苦労なのです。ラインをブロックしたりと、一部マナーの悪い方も居ますしね。
秋山街道は、いわゆる裏街道的位置づけの道。四輪車は地元の車しか居ませんし、バイクもマスツーリングは皆無。中低速カーブばかりで構成された、割と私好みの道なのでありますよ。
牧野から秋山街道に入ってすぐ、良いペースでワインディングを走っておりましたら、前方を行く大型バイクに追いつきました。Kawasaki Ninja
H2であります。映画TOPGUN Maverick でトムクルーズが乗っていたアレ。市販車最速と云われるバイクですけれども、低速カーブが連続する秋山街道では、本領発揮とはいかないのでしょう。元々サーキットでの走行を重視して設計されておりますからなぁ。その点私の乗るKawasaki
ZRX1100号は、中低速重視の並列4気筒エンジン搭載ですから、秋山街道のような中低速カーブばかりの峠道は、水を得た魚のようにキビキビと走ってくれるのでありますよ。
後ろについて Ninja H2 の様子を見ていると、ライン取りもアクセルワークも滅茶苦茶。これは免許取り立てか、または技量に見合わぬ超高性能マシンを勢いで購入してしまったパターンかも知れません。
無理に抜かしてコケられても嫌なので、十分な安全マージンを取って追い抜きました。その後はいつのも自分のペースで走ったのですけれども、最初は無理に私に追従しようと焦っていた様子だった
Ninja H2 も、じきに諦めたようで、私のバックミラーの視界から消えたのであります。
頂上のトンネルを越えると秋山街道は禾生に向かって下りに転じます。朝日川を渡ると人家がパラパラと出始めますので、ここからは、いつも極端に速度を落とすようにしております。子供が急に飛び出すかも知れませんし、そもそも市街地での大幅な速度超過は、重大事故と隣り合わせですからな。
時速35Km程度でタラタラ直線区間を走っておりますと、登りでチギった Ninja H2 が、それこそ常軌を逸したスピードで、バビューンと抜いていきました。私を抜こうとH2がセンターラインを割った瞬間、道路右前方の民家から軽トラックが出てこようとしていて、H2
はそんなの見ちゃいないんだと思うのですが、軽トラが一瞬ブレーキを掛けたから何事も起きませんでしたけれども、あのまま道に出てきていたら、あわや大惨事というタイミングでありました。危ねぇヤツ。
コーヒーを買おうと禾生のセブンイレブンに入りますと、件の Ninja H2 が停まっていて、40代後半とおぼしき おっさんが話しかけてきました。
こんにちは〜!これってZRX? 1100なんてまだ走ってるんだ〜。これって20年以上前のバイクですよね。新型に比べて乗りにくくありませんか?
(いきなり何だよ。大きなお世話だ) え、まあ、25年もメンテしながら乗っていて、他のバイクに乗った事ないもんですから。
H2 最高ですよ。パワーもあるし速いし軽いし。
ま、ZRXの形が好きなんですよね、結局。それにキャブ車だから自分でセッティング出来るし。
バイクは形じゃなくて性能ですよ。是非 H2 に乗って貰いたいなぁ。230馬力出てますからね。
私にはこれで十分ですよ。(ウザいヤツ) 低速トルクあるんで乗りやすいんです。
ところでさっき、下りで僕が抜いたの気がついてました?下りは割と苦手なんですね。重そうだもんなぁZRX。
(馬鹿だなこいつ。軽トラが出てきそうになってたの気がつきもしないで) あなたは下りが得意なんですか?
ええ、まあ、H2 に乗れば登りも下りも死角無しってとこですかね。
(こいつ秋山街道の登りで俺にチギられたの分かってないのかな) ふ〜ん、新型も良いっすね。
これから道坂峠経由で道の駅道志に行くんですけど、一緒にどうです?
ああ。いつでも誘ってくれ。
宮島未奈著「成瀬は都を駆け抜ける」(新潮社)からのお言葉です。元々私も道坂峠に行くつもりでしたし、たまには誰かと走るのも良いでしょう。R139都留バイパスのデイリーヤマザキのところを斜め左に入り、橋を渡ってすぐの法能の丁字路を左折すると道坂峠の入り口です。まだまだコンビニや人家があるというのに
Ninja H2 は常軌を逸した速度で直線をバビューンと駆け上がっていきます。コンビニとかある道でこんなにとばすなんて、やっぱりコイツ、真性の馬鹿に違いありません。
私は人家が途切れるまでは法定速度プラスアルファ程度の速度で進み、山岳区間に入ってからアクセルを開け始めました。山に入って四つ目のヘアピン(右ヘアピン)であっけなく
Ninja H2 に追いつき、相手が少し孕んだ隙を突いてラインをクロスさせて、立ち上がりで一気に抜き去りました。カーブ3つ程でバックミラーから消えましたよ。
頂上のトンネル内を時速30Kmで走りながら H2 を待っていると、 やっと追いついてきましたので、トンネルを出るやいなや下りのワインディングに向けて一気に加速。ちょっと大人げないかなとも思いましたけれども、ヤツの得意だという下りで完全にチギってやりました。とは云えこんな危ないところで全開走行などする筈もなく、私なりに十分な安全マージンを確保しながらの走りであった訳ですが。
道坂峠を下りきって、道志街道の感応式信号で2分程待っていたのですが、 Ninja H2 はついぞ現れず。私は道の駅に行く気も失せて、国道を左折して帰路についたのですけれども、まさかあの
H2、途中で転んだりしてねぇよなぁ。
【つづく】
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