季にオートバイで出掛ける行為は、まさに寒さとの戦いであります。自転車であればそれなりに心肺機能を使いますから、長い下り坂を除き、少なくとも全身が凍えるほど寒いという事は滅多にありません。ところがオートバイは、冷たい風に体温を奪われる事はあっても発熱する要素は一切ありませんので、抹消部分からじわじわと冷えが這い上がってくるのであります。

　特にこうした傾向は高速道路で顕著です。道志街道などのワインディング・ロードの方が標高が高くて寒そうに感じるかも知れませんが、キビキビ走ってもクネクネ道の平均速度などたかが知れていますし、体重移動などそれなりに身体を動かしていますから、全く身体を動かさずに常に時速100Kmの風を浴び続ける高速道路における強烈な冷えとは、比較になりません。

　冬季の高速移動では冷えによりおしっこも近くなりますし、暖かいモノも飲みたくなりますし、まるで各停の電車のように、全てのパーキングエリアとサービスエリアに寄りながら、進んで行く事になるのです。ホットコーヒーを飲むからおしっこが近くなる。おしっこが近くなるからパーキングエリアに寄る。折角寄ったんで暖まる為にコーヒーを飲む。悪循環ここに極まれり、であります。

　寒い寒い寒い！パーキングロットにオートバイを停め、まずはトイレに行ってから、パーキングエリアの建物に入ります。あ〜暖房が心地良い〜。自販機にお金を投入し、「コトコト煮込んだポタージュスープ」のボタンを押します。ゴトン。下の取り出し口を見ますと、あれ？これってポタージュじゃなく缶コーヒーじゃね？しかも冷たい奴だし！！

　コトコト煮込んだポタージュスープと冷たい缶コーヒーのボタンは上下に並んでいて、もしかして、もしかして、俺って一段列を間違ってボタンを押してしまったのか？！

　それが、もし、事実であるのならば、俺はなんて愚かなのだ。

　住野よる著「この気持ちもいつか忘れる」（新潮社）からのお言葉です。あ〜あ、やっちまいました。この日はキンキンに冷えた缶コーヒーをウエストバックに入れ、一日中持ち歩いたのでした。だって飲まずに捨てるのは余りに惜しいし、かと云って飲んだら身体が冷え切るのは間違いないし。自販機のボタンを押す前には、再度確認しましょうね、というお話で御座いました。

【つづく】

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