みさんと私はドライブが好きで、割とよく日帰りで出掛けます。電車での外出と違ってドライブは「車内」というプライベートな空間が確保されていますから、他人の目を一切気にせずに、お喋りしたり、お菓子を食べたり出来るのがメリットであります。特に我々のドライブは特定の場所を訪れる事よりも、車内で過ごす行為自体を目的としている事が多く、故に雨が降っていても、行き先が遠くても近くても、更には道中が渋滞していたとしても、ほとんど影響がないのでありました。ドライブに出掛けて、途中立ち寄ったのはコンビニだけという事も、実際珍しくありませんからなぁ。
かみさんも運転免許を持っておりますし、普段は車をメインで使っているのは実はかみさんだったりするのですが、ドライブデートの際に彼女が運転する事はまずありません。特に決まりがある訳ではなく、何となくそうしているだけなのですけれども、昔からドライブの時の運転は全て私の担当であります。
お菓子とジュースを満載し、それを食べながらお喋りを楽しむドライブという行為は、シートに座ったまま全く動かない状態で食べ続ける事と同義ですので、実際のところ肥満へまっしぐらでありましょう。でも普段はお互いに仕事がありますし、ゆっくり何時間もお喋りする機会なんて中々ありませんから、多少太るのも致し方ない事として諦めております。
思い切り食べて車に揺られますと、眠くなってくるのは、ある意味、道理。私は運転しているので大丈夫ですけれども、助手席のかみさんにすれば、時として強烈な眠気に襲われるようなのであります。
「ねぇねぇYasちゃん」
「なあに?」
「あのさ、少し眠くなってきちゃったみたい」
「あそう。シート倒してちょっと寝たら?」
「頑張って起きてる。だって折角のドライブなのに、寝たら勿体ないもん」
「そんなに頑張らずに寝ちゃえば良いじゃん。俺ラジオ聴きながら運転するから大丈夫だよ」
「イヤだイヤだ、寝ない寝ない」
「そんな事云いつつ、相当眠そうだぜ」
「う〜ん、じゃ5分だけ寝るから、5分経ったら起こしてね」
「5分じゃ寝た気がしないよ。30分経ったら起こしてあげる」
「約束だよ。30分経ったら絶対に起こしてね。絶対に絶対だよ」
御意を承りました。
浅田次郎著「一路(下巻)」(中央公論新社)からのお言葉です。結局30分で起こす事などせず、自然に目が覚めるまで待つのが常であります。眠くなるというのは、体が睡眠を欲しているという事。ドライブでお喋りするのも楽しいですが、揺れる車内でウトウトするのも至福でありますからなぁ。
我々のドライブデートは、全く運動しないまま、お菓子をたらふく食べた後、ぐっすり眠るという、実に不健康な遊びなのでありました。ま、楽しいから良いんだけどさ。
【つづく】
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