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キャプテンスタッグ製
シームグリップ |
本的に、割と物持ちの良い方であると、自認しております。例えば、ダンロップの山岳用テントVL-2は、購入から既に18年が経過。確かに型式は古いのですが、最新型のVS-20に比べても、機能的にはほとんど遜色ありません。十分に軽量でコンパクトですしね。それよりも驚くなかれ、18年間使用して一切の破れもホツレも無いのです。18年前の購入価格は4万円超と、中々高価であった訳ですが、良い物は長持ちするって云うのは、ホントでありますなぁ。
とは云え、経年変化による劣化は避けようがありません。ま、軽く100泊近く使い倒しておりますからね。そこで今回は、テントの大規模修繕を実施する事にしたのでありました。
まずはポール。アルミ製のポール自身は全く問題ないのでありますけれども、中に張ってあるショックコード(伸びる紐)を新品に交換します。ポールがバラバラになるのを防ぐとともに、ある程度のテンションを掛ける事で、組立時にストストストっとスムーズに繋がるようにしてあるのですが、構造上、格納時も設営時も常にテンションが掛かり続ける為、放っておくとゴムが伸び気味になってしまうのです。南大沢のWild-Oneで2mm径のショックコードを10m買って参りました。1mあたり60円。たった600円でポールが新品同様の使い勝手に戻るのですから、実に安い買いものであります。
続いて縫い目の防水処理。元々熱圧着されていた防水テープが所々浮き気味になっておりましたので、これを一旦全て剥離します。このままでは防水性に難有りですからね。ドライヤーで熱してテープを伸ばすように引っ張ったら、ツルツルっと簡単に剥がれましたよ。
この状態でテントとフライシートを洗濯機で洗います。勿論、手洗いモードで優しくネ。防水性の高い布で作られていますので、普通の洗濯モードでは、水を孕んで破けてしまう可能性がありますからな。
24時間陰干しして完全に乾燥させ、いよいよ防水処理に入りましょう。今回は、剥がれやすい熱圧着テープではなく、キャプテン・スタッグ製シームグリップを使います。ようはウレタン系の接着剤で縫い目をシールしてしまおうという訳です。こいつはゴアテックスのシールも可能な優れモノですが、難点は硬化に12時間から24時間掛かる事。当て布とアイロンを使って熱圧着テープを貼った方が簡便ではありますが、ここはより強固な防水性を求めて、敢えて面倒なシームグリップをチョイスしました。
テント本体にポールを通し自立させた所で、テント下部の黒い防水布の縫い目を埋めるように、平筆でシームグリップを盛っていきます。テント下部の防水が悪いと、雨の日に下から水が染み込んできて、寝袋が台無しになってしまいます。縫い目を丁寧に潰していきます。寒い雨の夜に寝袋が濡れるのは、大層悲しいですからなぁ。
続いてフライシートを裏にしてテントに取り付けて、ピンと張った状態にし、同様の処理をしていきます。つまりフライシートの裏側から縫い目を潰していこうという訳。作業中に部屋を汚さない為には、フライシートを裏にして張ってしまうのが一番簡便な方法でしょう。
物は主に語りかけようとしている。だから、声の届く場所に置いておかなければならない。声が聞こえなくなれば、それが別れの時なのだ。
湊かなえ著「山猫珈琲(上巻)」(双葉社)からのお言葉です。18年モノの山岳テント、ダンロップVL-2は、今回の大規模修繕で新品同様に生まれ変わりました。これで少なくともあと5年は使えるでしょう。
キシキシと地面と擦れ合ったりしないように、面倒がらずに下にレジャーシートを敷き、きちんとペグダウンする手間を厭わない事。風向きを見て、テントが風を孕まない位置に入り口が来るように設置して、無理な力が掛からないようにする事。紫外線による加水分解をなるべく避けるように、朝早く起きて、夜露が乾くや否や陽が高くなる前にテントを畳む事。こうした基本をきちんと踏襲するだけで、縫製のしっかりしている良いテントは、非常に長持ち致します。湊かなえ氏は「声が聞こえなくなれば、それが別れの時なのだ。」と仰っていますけれども、まだしばらくは、「声の届く場所に置いておく」
事になりそうです。涼しくなったらキャンプに行こうっと。
【つづく】
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