年で53歳になろうというオッサンな癖に、年相応のアイテムには、とんと興味が湧かないのであります。アルマーニのスーツを誂えたいたい訳でもなく、ロレックスの時計を欲しがる訳でもなく、高級車を乗り回したい訳でもなく、ナイトガウンを身に纏いパイプをくゆらしながらゴルフクラブを磨いたりしたい願望もありません。私が幼少の頃抱いていた、50代男性の大人のイメージとは、あまりにもかけ離れた生活です。
欲しいものと云えば、超高速大容量のパソコンとか、新しいジャージとか、ありとあらゆる新刊本とか、超軽量の自転車タイヤとか、およそジェントルマンには相応しくないモノばかり。うちのかみさんにしても、宝石にも、ブランド品にも、高級レストランにも興味がないみたいで、二人で近所のラーメン屋に出掛けて半チャンセットを注文して、十分大満足であったりします。
まったく、ひとはいくつになったら、おとなになれるのだろう。
村山早紀著「百貨の魔法」（ポプラ社）からのお言葉です。53歳と云えば本来十分大人であるべきなのに、二人がつきあい始めた大学生の頃の嗜好や価値観のまま、ここまで生きて来てしまいました。二十歳の頃からかみさんとずっと一緒にいる事も、その一因かも知れませんな。
シンプルで素朴でチャイルディッシュな今の二人の生活は、それはそれで快適で楽しいモノではあります。目一杯お洒落をして夫婦で銀座でショッピングを楽しむ、なんていう大人の暮らしに、一縷の憧れすら無いと云えば嘘になりますけれども、実際のところ今のままでも十分楽しく仲良く暮せておりますので、まあ良いかというのが正直な感想であります。
【つづく】
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