週の月曜日の事。我が程久保基地からほど近い多摩動物公園の付近を、犬のこむぎと歩いておりました。朝の散歩です。この日私自身はお昼から仕事でありましたけれども、世間様は成人の日の祝日で、多摩動物公園周辺は、たくさんの家族連れで賑わっていました。
私とこむぎは、中央大学の裏山の栗林の道を目指していたのですが、このルートの周りには動物園のお客目当ての駐車場がたくさん存在していて、特にこの日のような祝日には、普段以上に多くの車が集中するのであります。
ふと見ますと、栗林の道の入り口近くの歩道で、警察官がうずくまっています。この日は結構冷え込んでおりましたので、具合でも悪くなったのかとこむぎと共に近づいていきましたところ、件の警察官はやおら立ち上がり、旗を振り回しながら笛を吹きつつ車道に飛び出し、通行中の車を停止させたのでありました。
そういうことか。
蒔田陽平著「小説版 DESTINY 鎌倉ものがたり」(双葉社)からのお言葉です。交通機動隊とかそういうのではなく、おそらくは交番か派出所の警察官でしょう。一人で一時停止違反の取り締まりをしており、見つからないように歩道脇にしゃがんでいたのでした。職務でやっている事は理解していますよ。しかし非常に見通しの良い丁字路の一旦停止。しかも右方向にはすぐに別の信号があり、右からは車がこない事は明白なのです。折角の休日の朝に、動物園に出掛けてきた親子連れの車に違反切符を切る為に、歩道脇にしゃがみ込んで待つ必要など有りますまい。一時停止の励行が目的であれば、堂々と交差点に立って指導すれば良いだけの事。これはもはや、"意地悪な点数稼ぎ”としか云いようがありません。
しかも取り締まりにしては非常に杜撰で、証拠用のカメラを回している訳でもなく、ただ飛び出て行って切符を切ろうとしているのです。
私とこむぎが歩いていくと、先ほど停められた家族連れの車と、警察官が、言い合いをしています。家族連れの車が「きちんと停止した」と云うのに対し、警察官は「タイヤは動いていて完全には停止していなかった」と云っているようなのです。ほぼ停止状態にあったのですから、交通安全的な目的は十分に達しているでしょうに。
後部座席では小さな子供が泣いてしまっています。お父さんのただ事ではない雰囲気に、胸が一杯になってしまったのかも知れません。こりゃいかん。ここまでしてこの車を取り締まる意味など全く無いでしょう。一時停止を完全に無視したならともかく、タイヤが動いている/動いていないレベルまで減速しているのですから。
私とこむぎは警察官に近づき「車は完全に一時停止しました。証言しますよ」と免許証を提示しながらハッキリと告げました。警察官はビックリしたような顔で「あんたホントに見ていたのか」と聞いてきました。私よりも明らかに若いと思われるその警察官の言い方が高圧的で、ちょっと頭にきたので、「お前が歩道脇の草むらにしゃがんで隠れているところからずっと見てたよ」と、こちらもわざとぞんざいな言葉で返すと、黙ってしまいました。すかさず歩道に停めてあった警察の原付バイクのナンバーをスマホで撮影して「あのね、ここ駐車禁止ですぜ」と云うと、これで完全にチェックメイト。めでたく家族連れは無罪放免となり、警察官はその場を退散。私とこむぎは悠々と散歩を続けたのでありました。
取り締まりのノルマをこなさなければならないのは分かりますが、捕まえやすいところを狙うのではなく、より悪質な輩を何とかする事に注力して貰いたいものであります。ともかく、休日の朝から子供を泣かせるのはマズいですぜ、あんた子供の憧れの対象なんだからさ。ね、お巡りさん!
【つづく】
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