ラリーマン時代は社用で頻繁に海外渡航していたものですが、会社を辞め自営業者になってからは、とんと出掛けておりません。現在の商売は地元密着の業態ですので、海外はおろか、仕事で都心に出る事すら皆無なのであります。零細ながらもお陰様でホソボソと仕事を続け14年目に入りましたので、13年間全く海外渡航をしていない計算です。
海外に出掛けなくなった事には一切の痛痒を感じません。と申しますのも、私の場合、遊びでの渡航の経験はほとんど無いものですから、海外=辛い仕事、というイメージが定着してしまっているのです。私が頻繁に渡航したのはバブル崩壊後で、会社から経費節減を厳命されるような時代でした。基本的に同行者は無く、単身での渡航。会社を代表してたった一人で相手方と打ち合わせをし、仕様を決め、トラブルに対応し、その責任は全て自分に掛かってくるという、割とキツい仕事でありましたから、あまり海外に楽しい思い出が無いのです。仕事に専念するばかりで、ほとんど観光もしませんでしたしね。
海外に居るメリットは、国内にいる以上に日本の事をしっかり認識出来る点に尽きると私は思います。国内メディアによる報道は国内用にフィルタが掛けられているという事実に、国内に居るとほとんど気付きません。近隣の某国のような報道規制や人心誘導は、我が国において一切存在しないと信じていた事が音を立てて崩れていく想いは、日本を外から見た者のみが経験出来得るのです。そういう意味において、若い方には自国日本を知る為にも、積極的に海外に出掛けて欲しいと思います。ま、勿論、リゾート地で馬鹿騒ぎをしているだけでは全く意味ないですがね。
玄関の扉を開けて外へ出ないと、家の外壁の色は分かりませんからね。
2016年7月9日(土)放送のラジオ番組、J-WAVE ANA World Air Currentでの、葉加瀬太郎氏のお言葉です。全日空の提供で、バイオリニストの葉加瀬太郎氏がパーソナリティを務めるのこの番組、毎週ゲストをスタジオに招き、旅の思い出話を聞くという趣向です。私はこのラジオプログラムが割と好きで、ただしオンタイムで聴取する事はスケジュール的に難しい事も多いものですから、PodCastで聞いております。
日本を知る為にも積極的に海外に出掛ける重要性は分かっていながら、忙しさにカマケて中々出掛ける機会が無いせめてもの代わりとして、日本国内の報道だけでなく海外のメディアのニュースにも目を通すようにしています。やってみると分かりますが、海外のメディアと日本のメディアで扱うトピックが異なったり、論理の指向が違ったりするのは、割と普通の事。例えば、http://www.nytimes.com にアクセスしてみて下さい。特定のニュースに関して、ニューヨークタイムスと国内の報道機関の論調の違いに、驚くかも知れません。
先日も米国の某有名新聞のサイトを見ていて驚きました。日本では全く報道されていないニュースが、米国ではかなり大きな扱いで掲載されていたのであります。記事を要約しますと以下のようなお話。原文は英語で、この邦訳はYasによるものですので、細かい翻訳ミス等についてはご容赦下さいネ。
日本時間8月23日(火)に東京の千鳥ヶ淵にある国立戦没者墓所で、シベリア抑留者追悼の集いが行われた。1945年8月23日にソ連のスターリンが日本人のシベリア抑留を指示した事に基づき、この日に追悼式が実施されたという訳だ。抑留者やその遺族以外に、在日ロシア大使館員も出席して式典は行われたが、当の日本の国会議員は僅か2名が出席したのみ。日本国内におけるシベリア抑留事件への関心の薄さが伺える。多くの人々がシベリア抑留は戦争における被害と考えているようだが、8月15日に既に日本の敗戦が確定し戦争が終結していた以上、その8日後にスターリンによって出された命令は、戦争とは全く関係のない、組織的な拉致事件に他ならない。ソ連による国家ぐるみの犯罪だ。北朝鮮による拉致事件との、日本政府の温度差に驚きを禁じ得ない。国家が忘れてはならない重要な追悼が東京の千鳥ヶ淵で行われているその時、日本のリーダーであるミスター安倍は、リオデジャネイロでマリオに扮した閉会式からの帰途についていた筈だが、当の首相からは一切のメッセージやコメントが千鳥ヶ淵に届けられる事はなかった。
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報道にこれほどの差があるのです。当然の事ながら日本のメディアはこうした米国発信のニュースも全て把握しているでしょうし、だとしたらその上で、敢えてこのトピックを取り上げないという決断がなされたのでしょう。国内メディアが恣意的に情報をコントロールしようとしている状態を遥かに超えて、既に事態は報道規制や情報統制に限りなく近いと云わざるを得ません。やはり、海外に出て日本を俯瞰し正確に状態を把握する事は必要でありましょう。だって、こうした事実を他国の方が知っているにも関わらず我々は知らないとは、恥ずかしいのを通り越して、日本人の民度を疑われても仕方がない、まさに大問題なのですから。
海外渡航はともかく、少なくとも、海外メディアのウォッチングは、今後も継続していこうと思いま〜す。
【つづく】
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