るまとまった一連のサービスを受けようとして、その段取りを取る際、例えば、代理店に一括委託して様々な調整をお願いする場合と、自らが一つ一つ予約を取っていく方法とが御座います。前者の方は割と簡便に一連の計画を作って貰えますが、その分画一的にはなりがち。対して後者は、カスタムメイド的自由度は高くなる分、その手間は膨大です。
今回は介護のお話であります。介護の場合、訪問看護やデイサービス、かかりつけ医の往診の手配や入院の判断、ヘルパーさんへの注文や、車いすや電動ギャッチアップ式ベッドの手配など、全てを個人で計画し発注する事は難しいでしょう。しかもこれらの一部は介護保険で賄われますので、その保険点数計算もするとなると、ケアマネージャさんに委託せざるを得ません。
ケアマネージャさんは複数の医療関係者・介護関係者をまとめ、介護計画全体を立てつつ、要介護者を抱える家族との窓口の役目を果たす、重要な役割を担っています。いわばオーケストラにおける指揮者のようなもの。重要な役目だからこそ、担当ケアマネージャさんの資質によって、介護の質に大きな差が出る事も事実であります。
初めての介護の場合、どこまでを頼んで大丈夫なのかという感覚が学習出来ていませんから、自然と、担当ケアマネージャさんの判断にお任せ、という状態になりがちなのも無理からぬ事。しかし、いくらケアマネージャさんが、まるで家族であるかのように親身に動いてくれようとも、事実、家族では無い訳ですし、また、全てのケアマネージャさんが介護のエキスパートな訳ではありません。免許取り立ての新米の方だって、当然存在する筈ですからね。
更に、多くのケアマネージャさんが病院とか介護施設等に所属している状態である事も念頭に置くべきでしょう。弁護士のように完全に独立した存在では無い以上、所属している病院の意向の影響を強く受けるのは、ある意味仕方がない事かも知れません。
だからこそ、家族自身がある程度の勉強をし、率直に疑問や質問を提示した上で、ケアマネージャさんと一緒に最終的な介護方針を決めていく姿勢でないと、特に経験が浅いケアマネージャさんが担当だったり、それ程親身に考えてくれないタイプのケアマネージャさんが担当だったりした場合、全てのフラストレーションは家族に返って来てしまいますし、最終的には要介護者本人にも負担を強いる事になりかねません。
答えを相手に委ねても、迷宮入りさせるだけかもよ。
松尾衡監督アニメーション作品「夏雪ランデブー」(フジテレビ)からのお言葉です。医師に認定医制度があったり、プロテニスにランキングがあったり、システムエンジニアがオラクルの認定試験を受けたり、一定の飛行時間と操縦評価基準に達しないと副操縦士から機長にはなれなかったりするように、ケアマネージャにも何らかの能力指標の提示とそれによる分類・ランキングが必要ではないかと思う次第であります。
今回、介護場所の変更に伴い、ケアマネージャさんを中心とする、訪問看護、デイサービス、かかりつけ医、入院可能な病院、ヘルパー等のスタッフが総入れ替えになったのですが、以前に比べてあまりに手厚く親身でプロフェッショナルな段取りを見て、今までのあのケアマネのお粗末な仕事は一体何だったのかと、怒りを通り越し、呆れ果ててしまったのでありました。
それにしても、超高齢化社会が到来しているというのに、性善説的な考えによってケアマネージャのスキル差が放置されているのは、制度設計上の大きな問題だと感じました。
【つづく】
「今週のお言葉」の目次に戻る
「やすなべの目次に戻る」