大沢の駅の周辺には、自転車専用レーンが敷設されています。歩道はしっかり確保された上で、車道の一番左側に幅1m程の青くペイントされた自転車専用通行帯があるのです。おそらくは八王子市による社会実験の一環かと思われます。
歩道を歩行者と自転車に分割する形式の自転車レーンは、調布あたりでよく見るタイプでありますけれども、本来、自転車が車両である事を鑑みれば、歩道に自転車レーンを作ろうという発想自体がちょっとおかしいと云わざるを得ません。ま、仕方有りませんな。自歩道という言葉に象徴されるように、長らく自転車は歩行者と同様に扱われてきましたからね。
最近になってようやく「自転車は車両であるから、基本的には車道の左端を走行し、歩道の走行は例外的な措置に過ぎないものとする」という考え方が一般に浸透し始めました。6月1日の道路交通法改正で、車道を逆走する自転車に対し、違反切符が切られるようになりましたから、自転車が車両であるという意識は急速に定着に向かうのではないかと思われます。
そういう意味では、南大沢の青色にペイントされた自転車専用レーンは、本来の道交法を遵守した方法である事に間違いないのですが、実際には駐停車禁止の道路に敷設されている訳ではありませんので、ほとんどの駐停車車両が、自転車専用レーンを塞ぐ形で停めているのが現状です。折角自転車専用レーンを作ったにも関わらず、格好のパーキングゾーンとして使われてしまっていて、結局自転車はそれらの駐停車車両を避ける為に、車道に大きくはらむようにして進まざるを得ないという訳であります。
聞くところによると、オランダなどの自転車先進国においては、自転車専用レーンへの駐停車はカメラで監視され、罰金刑に処されるのだそうでありまして、やはりこうした制限とワンセットでなければ、格好の駐停車場所となってしまう事は想像に難くないでしょう。
事において短慮で困る。
山本おさむ・白山宣之共著「麦青」(双葉社)からのお言葉です。社会実験に踏み切った行動力には敬意を表します。しかし、もう一息、例えば自転車レーンと車道の間に、1mおきにゴム・パイロンを設置して、駐停車車両が自転車レーンを塞げないようにする等の方策を講じて欲しかったなとも思います。現状では自転車の安全を確保するどころか、逆に危険に晒している訳ですからね。
ま、それ以前に、平気で車道を逆走する自転車の撲滅が先でありましょう。交通インフラにおける自転車の地位の確保は、まだまだ多難なる道のりの途上である事は間違いなさそうです。
【つづく】
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