イクリングには良い季節になりました。昨年末からまさに冬籠もり状態であった我がピンク号も、ここのところ出動の機会が増えてきております。しかし如何せん、乗らないでいた期間が長かったものですから、以前のような調子に完全に戻った訳ではありません。
途中で体力切れになっちゃったらどうしよう、などと心配を始めたらもうキリがないのであります。そこでルート選択にしろ装備にしろ、臆病風を吹かせて、保険を掛けまくってしまうのでありました。
自走で帰って来れなくなった場合を想定して、ルートは鉄道でのアクセスが良いところを選びます。いざとなれば輪行が可能というのは、大きな安心材料でありますからなぁ。輪行の可能性を考えますと、当然、輪行袋は必須アイテム。同様にディレイラやフォークを防護する金具も忘れてはいけません。レーシングジャージやピチピチパンツで電車に乗るのはちょっと恥ずかしいですし、そもそも汗だくのままでは迷惑そのものですから、短パンとTシャツと云った着替えも必要となります。
更にデオドラント剤。ま、最低限のエチケットでしょうな。その上で、文庫本も忘れてはなりません。私はブッキッシュな人間でありまして、活字が無いと30分以上電車に乗れないのであります。文庫本と来れば老眼鏡も絶対に必要。嗚呼このようにして、荷物は肥大化する一方なのであります。
これらの雑多な荷物をフロントバッグに詰め込んで、いそいそとサイクリングに出掛ける訳ですが、大概の場合保険的な考慮は杞憂に終わり、結局全線自走で走破しますので、フロントバッグの荷物は単なるお守りとなってしまうのでありました。本来ロードバイクとはスピードが命でありまして、重い荷物を積載する行為は逆説的であり、故に携行する荷物は最低限を旨とすべきである事は、一応は理解しているのですがね。
自然との接触は直接であるほどよく、荷物は軽いほどが良い。
伊谷純一郎著「アフリカ紀行〜ミオンボ林の彼方〜」(講談社学術文庫)からのお言葉です。はい、まさしくその通り。分かっちゃいるのですよ。保険的な考えから鉄道に沿って国道メインで走る事になり、サイクリングの醍醐味の一つである里山の自然を楽しむ事は叶わず、しかも使う事の無い余分な荷物をお守りのように持ち歩いているとなりゃ、何の為のロードバイクか分からなくなってしまいます。
そうは云っても現地で動けなくなってしまうよりは断然マシ。昔の感覚が戻ってくるまでは、もう少し今の保険満載の体制でのお出掛けが続きそうなのでありました。
【つづく】
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