あれこれ memorandoms やすなべ categorized Yasの状況 activities Yasについて about Yas Yasへの連絡 contact us

  今週のお言葉  

 学入試センター試験が終わったその翌日の新聞に、日程2日目に実施された数学及び理科の問題と正答が掲載されておりました。多くの受験生はこれらのデータを用いて自己採点をするのでありましょう。

 今回話題に挙げさせて頂きたいのは、その隣のページのお話であります。全段ぶち抜きで「自分の夢まで、自己採点しないでください」と書かれた河合塾の広告が掲載されていたのを、ご覧になった方は多いのではないでしょうか。

 大学で専門教育を受ける為には、その前提となる最低限の基礎スキルが備わっている事が要求されます。本来、入試とはこうしたスキルの有無をチェックする為のモノであった筈。私が約30年前に大学を受験した折には、マーク式の共通一次試験(現在のセンター試験の前身)は教養としての全般的な学力を見るという傾向が強く、記述式の二次試験(各大学学部の独自問題)で、入学後に必要なベーススキルの有無を細かく確認する方式が取られていました。数学で考えてみましょう。各学部・学科によって、要求される基礎スキルが異なる以上、数IAや数IIBといった大括(おおくく)りの共通的な出題では、正確な適性判定が難しいのは当然です。例えば、建築工学を専攻する前提として、微分積分やベクトルは必須のスキルであるのに対し、確率や論理はそれほど要求されないのは自明でありましょう。これらを勘案しますと、各学部学科のニーズに合わせて細分化された独自問題によってのみ、適正なスキル判定が可能だと考えられます。

 ところが記述式の二次試験を伴わずにセンター試験の結果のみで合否判定を行なう私立大学が増えた事で、「夢を自己採点してしまう」受験生が出てきてしまった事は、既に社会問題化していると云って良いかも知れません。本来は、志望校すなわち「将来の夢」や「入学後の目標」を先に決めて願書を出し、そこを実際に受験する、というのが自然な流れだった筈です。ところがセンター利用方式の私立大学の受験では、センターにおける必要教科の合計点数だけで合否が決まってしまいます。その学科では不要な部分で点数を稼ぎ、逆に必要なカテゴリでは低得点かも知れないのです。そこには細かい適性判断など存在し得ません。ボーダーラインだけを睨みながら複数の異なる学部に願書を出しまくるなど、もはや当たり前の事。入学後に何をしたいのかを考える事無しに、合格証を得る事だけしか意識しないのは、やはりおかしいと思うのです。これが専門性を持たない公立高校の普通科の入試方式だったとしたなら、まだ理解の余地は残されるのですがね。大学は、普通科の対極にある、専門教育機関ですからなぁ。

 こうした方式の導入は浪人を減らす為には確かに有効かも知れませんが、打算的な選択が横行する危険も(はら)んでいる事を忘れるべきではないでしょう。志望校合格に向けて頑張る事と、受かりそうな所を志望校にしてしまう事は、全く別であります。例えて云えば、欲しい商品を買う為には愚直にお金を貯めるべきであって、欲しいか否かに関わらず所持金の範囲内で購入可能なモノをさも元から目標だったかのようにしてしまうべきではない事に似ています。これでは、まさしく広告にあった通り「夢を自己採点してしまう」行為に他ならないではありませんか。夢や目標は、事前に自分で決めておくべきモノなのです。

 あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。

 西加奈子著「サラバ!(下)」(小学館)からのお言葉です。文部科学省は6年後を目標に現在のセンター試験を廃止し、年複数回の学力判定テストにリプレースする方針のようであります。しかしこれとて数回に分散されるだけで、今までと本質的に変わりはありません。志望校に願書を提出しその上で各大学の独自問題を受験する昔ながらの方式の方が、シンプルで的を射ていると思うのですが。新方式への切り替えを機に、独自問題形式のみへの変更を検討している大学は、実は多いのではないでしょうか。統一試験方式、すなわち大学入試センターへの過度な依存から脱却すべき時が近づいている気がします。だからといって学力審査無しに面接だけで合否判定するアドミッション・オフィス入試(AO入試)も、最高学府で専門教育を受ける際の登竜門として考えると、ちょっと違和感を覚えてしまいます。得票数で敗れた候補者を、人物重視の面接で復活当選させたとしたら、選挙の意義は無くなってしまうでしょう。AOで入った大学生の中に分数の計算が出来ない者が複数存在した、などといった昨今の報道を見ますと、現在の多様過ぎる入試方式自体が、日本の教育システムを壊しているように思えてならないのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

「今週のお言葉」の目次に戻る

「やすなべの目次に戻る」

Copyright(C) by Yas/YasZone