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  今週のお言葉  

 週の土曜日の事で御座います。(きた)るグランフォンド八ヶ岳への足慣らしを兼ねまして、雛鶴(ひなつる)峠に向かって自転車を走らせておりました。ええ、勿論ロードバイクのピンク号での出動です。

 折しも三連休の初日という事もあり、甲州街道は混んでおりました。大垂水峠を越えて相模湖に向けて下り始めますと、千木良(ちぎら)の手前から渋滞しています。中央道の渋滞を嫌って下道に迂回した車による二次的な混雑でしょう。結局の所、連休はどこも混むという訳ですな。相模湖IC入口までは、慎重に路側帯を進んでいきます。

 吉野の信号で甲州街道を離れ、橋を渡って日連(ひづれ)に向かいます。さぁ、ここからは渋滞とは無縁の山の中の道。自転車とは云え、渋滞のすり抜けは神経を使うものなのですよ。ここからは気儘(きまま)に走れます。

 藤野芸術の家を過ぎると三叉路が見えてきました。ここを右に入ると、いよいよ雛鶴に繋がる秋山街道であります。神奈川カントリークラブを横に見ながらトコトコと進んでいきます。雛鶴に向かって登っているこのルート、決して登り一辺倒という訳ではなく、アップダウンを繰り返しながら徐々に高度を稼いでいくタイプの道であります。下り区間は確かに楽のように思えますけれども、頻繁に登りと下りを繰り返すので、逆にペースが掴めず疲弊致します。

 秋山カントリークラブまで登ってきました。ふと気が付くと、いつの間にか後方6〜7mにロードバイクが一台ついて来ています。私を風除けに使う訳ではないようですが、抜かそうとする気配もありません。参ったなぁ。こういう風にピッタリつかれると、結構プレッシャーなんですよね。

 実はボトルの水が終わってしまっていて、自販機で買おうと考えているところだったのですが、今自販機の前で私が止まったら、後ろのローディーは「ふふ。力尽きて足を着いたな」と思うに違いありません。ここ秋山街道の街道筋には、割とたくさんの自販機が設置されていて、飲み物の補給には事欠かず、故に油断して、逆にボトルの水が切れるまで放置してしまったのであります。

 それにしても喉が渇きました。王の入り饅頭までは、まだしばらくあります。この饅頭屋は地元のローディー達には有名で、ほとんどの方はここで一休みし、お饅頭を頂くのであります。味噌と餡この2種類の饅頭はどちらもとても美味しく、食べると元気が湧いてます。ローディーのサービスエリア化している王の入り饅頭まで頑張れば、足を着いても不自然ではないでしょう。

 ああ、また自販機を通り過ぎてしまいました。喉の渇きは既に限界に達しようとしています。しかし、私が足を着けば、後ろのローディーは私の事を負け犬野郎と思うでしょう。「お先に失礼しま〜す」とか何とか云いながら「フフ。勝ったな」と密かにほくそ笑むに違いありません。それは余りにも悔しい。でも喉の渇きは既に限界。そうだ。後ろを千切っちゃえば良いんだ。明らかに後ろを引き離した上で、勝者として堂々と自販機で水を買えば良いのです。

 試しに立ち漕ぎで引き離しに掛かります。苦しい。ガシガシガシっと50m程引っ張って、ちらりと後ろを盗み見ると、何と!!後ろも立ち漕ぎで、ピタリと着いて来ているではありませんか!!作戦失敗〜。だがここまで頑張ってきて、むざむざ抜かされる訳には参りません。息が上がってゼ〜ゼ〜の状態ですが、ペースが落ち過ぎないように泣きながら漕ぎ続けます。

 私が元のペースに戻すと、後ろのローディーも、後方6〜7mの元の位置にピタリとつけました。ちくしお。ヤツは私を抜かしに掛かる心算(つもり)は無さそうであります。あくまでも後ろからプレッシャーを与えて、私が力尽きるのを待つ作戦のようです。

 あ〜あ、ここで、電話でも掛かってこねぇかなぁ。こんな事もあろうかと、出発の際に携帯電話の着信音量を最大にセットしてきたのでした。今電話が掛かってくれば「仕方ねぇな電話かよ」という顔をしつつも、電話に出る為に合法的に足を着く事が出来ます。しかし残念ながら、上野原市役所秋山支所を過ぎたこの辺りは、携帯電話の圏外なのでありました。嗚呼、ダメだ。むざむざと負けを認めるしかないのか。辛い。喉が渇いた。目が霞む。

 そうだ、意図的にチェーンを落とそう。足を止めて、フロントをシフトして、おもむろに逆回転すれば、チェーンは外れる筈。我ながら良い案だ。チェーンが外れちゃ仕方がない。ダメだ〜。ピンク号にはチェーン外れを防止するプロテクタを装着していたのだった!!折角良い案だと思ったのに・・・。他に無いか。何か無いか。合法的に足を着く方法は無いのか!!

 上り坂ってのは、どうしてこうも神経をすり減らすものなのかね。

 万城目学著「悟浄出立」(新潮社)からのお言葉です。ギリギリの攻防を続けていたら、めでたく王の入り饅頭が見えて参りました。ふぇ〜助かった〜。何とか、男のメンツは守られました。饅頭屋の自販機でファンタグレープを買って一気飲みします。プハ〜っ美味い!!ところでレースでもないのに、何で俺、こんなに頑張っちゃってるんだろ?

 この日食べた、味噌味のお饅頭は、普段の数倍美味しく感じられたのでありました〜。この日はこのまま雛鶴(ひなつる)トンネルを抜けて、リニア実験線に沿って禾生(かせい)に下り、大月経由で甲州街道を帰ってきたのですが、秋山街道での意地のはり合いが効いて、帰りの国道はまさにヘロヘロ。くったくたの130Kmサイクリングでありましたとさ。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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