には、本物とは全く違う味なのに、既にその味が市民権を得てしまっているモノが存在致します。かき氷のメロン風味や、イチゴ風味などがその典型的な例。実際のメロンやイチゴとは似ても似つかない味にも関わらず、かき氷のメロンと云えばあの味、というのは、我々の中で完全に定着をみているのは間違いのない事実であります。それにしても、最初にあの味をメロン風味としてリリースしたのは、いったいどこの誰なんでしょうね。
程久保基地の最寄り駅である、京王電鉄多摩動物公園駅でかみさんと高幡不動行きの電車が来るのを待っている時の事。ホームの中程に菓子パンの自動販売機があり、二人ともちょうど小腹がすいていたものですから、パンを買って半分こして食べよう、という話になったのであります。デニッシュ系のモノや、あんパン、ジャムパン、クリームパンと甘い味のものが多く並ぶ中、ひときわ我々の目を引いたのが「ピザ風味パン」でありました。
パッケージにはサラミソーセージの乗ったピザが色鮮やかに描かれています。チーズがたっぷり垂れ下がっている絵が食欲をそそります。これだ!私とかみさんは迷わずこの「ピザ風味パン」を選択したのでありました。
ところが、お金を入れてボタンを押し出てきたパンを見てガッカリ。当然のごとくチーズとサラミが乗ったピザパンが出てくると想像していたにも関わらず、実際のパンは単に、かすかにケチャップ風味のついたデニッシュに過ぎなかったのであります。サラミはおろか、チーズすら乗っておりません。全然ピザじゃねぇじゃん。確かに表記は「ピザ風味パン」となっていますから、ピザパンでなくとも文句は云えないかも知れません。しかしパッケージのあの絵は幾ら何でも反則でありましょう。
カレー味のカールは、断じてカレーではない。
三浦しをん著「木暮荘物語」(祥伝社)からのお言葉です。ピザ風味パンは、断じてピザパンでは御座いませんでした。それにしても、生麺風味とか、カニ風味とか、〜〜風味という表記には、注意が必要なようでありますぞ。
【つづく】
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