に決定的に欠けているスキル、それはファッションに関する知識やセンスです。今、街でどんな格好が流行っているのか全く分かりませんし、ブランドの知識もゼロ。コーディネートと呼ばれる行為が何を基準にしているのか全く理解しておりませんし、それどころか、ショップ店員の喋っている単語もほとんど理解出来ておりません。一般的に私のようなオサ〜ンにはファッションに疎い方が比較的多いと聞きますけれども、私のファッション偏差値の低さは、その中でも群を抜いている事は間違いないでしょう。
               そこで、服や靴を買う場合は全てかみさんと一緒に出掛け、かみさんの云う通りに試着をし、かみさんの判断に従って購入しております。別にかみさんに強要されている訳ではなく、そもそもファッションというモノに興味もセンスも無いのでありますよ。
               ところが世の中には、いわゆる着道楽の方がたくさんいらっしゃるのですなぁ。先日、入間にある三井アウトレットパークにお出掛けしたところ、人人人!!みんな嬉しそうな表情で店から店に移動していきます。ここにいるほぼ全員の方が、服や靴を選ぶ事を楽しんでいるとは!!
               かみさんが、私の服を選んでくれている間、私はやる事もなく店内でボ〜っと佇んでおりました。すると、よりによってこの私に、店員さんが話しかけてくるではありませんか。
              「お客様、本日はどのようなモノをお探しでいらっしゃいますか」
              
              「え〜とね、そろそろ暑くなってきたから涼しい服」
              
              「は?」
              
              「だからね、暑くなってきたから半袖の服を買いにきたの」
              
              「はぁ」
               店員さんは、私が悪意をもって追っ払う目的で、こういう云い回しをしていると勘違いした模様。いえいえ、私には邪悪な感情などひとかけらもありません。本心から正確な情報を店員さんに提供しようとしただけなのですぞ。
               このようなファッション偏差値の低さであります故、普段も、かみさんが出してくれた服をそのまま着るだけであります。まるで幼稚園生のよう。でもシャツもズボンも靴下も上着も靴もかみさんの出してくれたモノをただそのまま着ていればそれで良いのですから、ある意味楽ちんな話ではありますがね。
               以前に一度だけ、自分なりのコーディネートってヤツを試してみようと思って、かみさんが私の為に服を出してくる前に、自分で服を選んで着てみた事があるのですが、これが大失敗。
               ねぇYasちゃん、何でこんな奇抜な組み合わせの服を選ぶの?そもそもジーパンなのに背広用のベルトなんかしちゃダメよ。あ〜あ、シャツもしっかりインしちゃってるし。そうよ、シャツは外に出した方がいいのよ。え?何々?だから、背広の時とは違うんだって。何かモコモコしてるけど・・・。まあ!シャツの下に何着てるの?寒いから着たって・・・。Yasちゃん、これってパジャマだよ。まったく〜。え!まさかこの靴を履こうと思ってたの?う〜ん。Yasちゃんの自分で選んでみようという熱意は分かったけど、ここは私に任せて。ちゃんと選んであげるからさ。ね、ねねねね。
               僕にはわからない。疑問符の数が増えていくだけだ。
               村上春樹著「女のいない男たち」(文藝春秋)からのお言葉です。本当にどうして良いか分からないのです。悪気がある訳でも、フザケている訳でもないのです。ファッションに関するスキルが著しく低いだけなのです。かくして今日もかみさんの出してくれた服をそのまま着ている私なのでありました。
              【つづく】
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