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  今週のお言葉  

 近、安倍晋三内閣の行動において、ことごとく対外的な交渉が不調に終わっているように感じます。勿論、実際最前線で調整作業を行なっている現場の方々の労苦は大変なものと理解しておりますよ。問題は政治家先生達の姿勢でありましょう。

 私が外資系企業でサラリーマンをしていた時、「真実は一つしかない」という前提で行動すると交渉が不調に終わる確率が高いという事実を、嫌と云うほど痛感したものでありました。あらゆる交渉は、単純な常識論ではかる事は困難であります。バックに諸々の意見や、意向や、しがらみや、そのグループ内だけで通じる常識や、逃す事の許されない利潤や、意地や、プライドや、それら諸々全てを背負って、ネゴシエーションは行われます。そこには一般論的な常識から多少外れている事が分かっていたとしても「正しい考え方」としてそれを押し通さなければならない事も多々あるのです。特に「恥」に対する閾値(しきいち)が我々とは多少異なる、別の文化圏の方との交渉ともなれば、こうした傾向はより顕著となるのはある意味当然かも知れません。

 この様な、交渉時におけるなりふり構わぬ主張行動を、我々日本人は「みっともない」と称し(さげす)みの対象として参りました。これは我々が、裁判沙汰を好まずなるべくであれば係争を避け示談での解決を模索する志向が比較的強い民族である事にも、多少なりとも関係あるかも知れません。

 竹島問題しかり、尖閣諸島問題しかり、従軍慰安婦問題しかり。中庸を旨とする行動や態度ではなく、自らの意志を声を大にして相手方にはっきりと伝える事が今こそ必要だと思うのです。相手方が不快に思う事を極度に恐れているばかりでは交渉は成り立ち得ない事を、政治家の先生達は知るべきでありましょう。真剣な利害の駆け引きにおいて、終始にこやかなる交渉などあり得ませんし、そもそも対等な交渉において相手の顔色を窺う事がおかしいのです。

 真実っちゅうもんは一つとは限らん。こちらにはこちらの、相手には相手の真実があるもんだ。ただ事実は一つだけだ。

 西崎義展(よしのぶ)原作アニメーション作品「宇宙戦艦ヤマト2199 第12話その果てにあるもの」から徳川彦左衛門機関長のお言葉です。作品中、地球とガミラスは互いに妥協点を一切見い出せず、武力による激しい衝突を演じています。私は戦争賛成論者ではありません。しかし意見の食い違う者同士が自らの考えを主張し合う場において、最悪のシナリオとして武力衝突に発展するかも知れない事までを想定内とし、その上でその最悪のシナリオの回避に努め、あくまでも平和的な解決を目指す行動を取るべきだと思うのです。

 テロリズム以外のほとんどの武力衝突は、こうした想定がなされないままなし崩し的に話し合いが開始され、意見の齟齬(そご)がエスカレートし過ぎてしまう事によって起こるボタンの掛け違いが原因です。戦闘行為は、自らの意志を相手に強要する物理的手段に他なりません。武力は声を大にして発言する行為と程度の差しかなく、それぞれは互いの延長上にあるのです。戦闘が相手に対する意見強要の最終手段だとすれば、武力衝突を想定しないで始める交渉は、その交渉や会談自体が準備不足であると云えると思います。

 こうした考え方は軍国主義的な傾向の発露(はつろ)と捉えられがちかも知れませんが、それは違います。日本を含む多くの国が備える固有の軍隊は、軍事衝突を想定の上それを回避する為の装備である筈です。その証拠に、実際に好戦を旨とする国など皆無でありませんか。

 政治家の先生方には、こちら側に向かって持論を振り(かざ)すだけではなく、真実や正義と呼ばれるモノは一つではないという事実を踏まえ、腹を据えて胸を張って毅然とした態度で、我々の真実や正義を伝え得る交渉をお願いしたいものであります。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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