日、ちょっとした用事で、郵便局に出掛けた際のお話であります。月末平日のお昼休み時間に当たる事もあるのでしょう。窓口はいつになく混んでおりました。
比較的流れの良い郵便業務窓口と異なり、私の待っていた郵貯窓口は中々順番が回って参りません。受付機から抜いたレシートの番号と窓口上部の電光掲示とを見比べますと、4人待ちである事が分かります。この日は特に急いでいた訳ではありませんでしたので、鞄から本を取り出し順番が来るのを座って待っていたのであります。
ポ〜ンと音がした後「52番の番号札をお持ちのお客様、3番窓口までお越し下さい」という合成音のアナウンスが聞こえました。一見したところ70歳台と思われる男性の方が窓口に向かって歩いていきます。私の受付レシートは53番。私の順番はこのオジサンの次であります。しばらく窓口の女性と話をしていたこのオジサン、突然カウンターを叩きながら「何故私が身分証明を提示しなければならないのだ!私を疑っているのか!!」と激昂しているではありませんか。おいおい、どしたの、オジサン。
やりとりに耳を欹ててみたところ、どうもこのオジサン、定額貯金を解約しに窓口に来て、身分証明書の提示を求められたのに腹をたてた様なのであります。私が見ておりましても、特に窓口の女性の対応にまずい部分があったという訳でもなく、実際のところ、このオジサン何ひとりで怒ってんの?という感じ。今時、定期の解約などの口座操作において、身分証の提示は当たり前でありましょう。しかも窓口の女性が横柄な態度を取ったとか、そういうミスは一切無いのです。確かに、通帳と印鑑が揃っていれば口座操作は可能という事になっていますから、オジサンの主張は一見正当なモノのようにも思えない事もありませんがね。
その正しい主張をな、怒鳴っちゃ駄目なのよ。
有川浩著「空飛ぶ広報室」(幻冬舎)からのお言葉です。規則と実務の間に差異はあるモノ。事故や犯罪を防止するという観点から考えれば、身分証明証の確認は、郵便局としては当然の行為でありましょう。例えば当のオジサンにしても、もし自分の口座からいつの間にか第三者に下ろされていたとしたら、逆に身分証の確認もせずに現金を出してしまった窓口業務者を責めたくなるのではないかしらん。
もしかしたらこれが最近巷でよく聞く「暴走老人」ってヤツかもしれませんなぁ。仮に虫の居所が悪かっただけとしても、あの怒り方はちょっとねぇ。
【つづく】
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