好はそれぞれとは云いながら、いい歳こいたオサ〜ンがアニメーション映画好きとは、あまり声を大にして云うのは憚かれるのが日本の常識である事は承知しております。下手すりゃオタク扱いをされてしまう可能性もありそう。そりゃそうですわな、アニメ好きというだけの括りでみれば、秋葉原をコスプレして闊歩したり、アニメキャラクタを全面にペイントした、いわゆるイタ車に乗ったりしている方との決定的な違いはありませんものね。私の場合、そこまでアニメに傾倒している事は無いとは云え、結構な量を視聴しているのは事実であります。
アニメーション作品視聴の魅力の一つに「発掘」が挙げられましょう。はじめからある程度の成功が約束される形でディストロビュートされる、ジブリやピクサーやドリームワークス等のメジャー企業による作品や、既に不動の地位を築いてしまっているドラえもんやサザエさん等のキッズ向け作品は別として、多くのアニメーション作品は雨後の竹の子のようにリリースされては泡沫のように消えていきます。まずは地上波深夜枠でのワンクール放送、それが好評だった場合はツークール以降の放映継続、更にその上での劇場公開版の制作、という具合に進んでいくのがアニメーション作品のヒットの方程式。こうした流れの中で、キラリと光る秀逸な作品を見つけた時の喜びは、まさに無上であります。
例えば吉浦康裕監督作品「イヴの時間」など、その最たるモノ。原作・脚本・監督を全て吉浦氏一人でこなしているこの作品、元々は2008年から順次インターネット上に公開されたショートストーリー群に過ぎませんでした。各話15分間の短いエピソードが6話になった時点で、これらを再編集し劇場公開版が制作されたという訳。ストーリープロットも作画も脚本も、個人的に制作されたものとは思えない程レベルが高い、秀逸な作品であります。
こうした秀でた作品に出会うのは実は簡単な事ではありません。その為には駄作も含めた数多くの作品を視聴し続ける必要があるのです。でもこれって、アニメに興味がない方から見れば、立派な「オタク的行為」に他ならないんですよね。
深夜枠からブレイクした作品で最近最も印象に残っているのは、「あの花」であります。正式名称は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」。埼玉県秩父市を舞台にしたこのアニメーション作品は、2011年にフジテレビの深夜枠で放映され大ブレイクしました。秩父を聖地と呼ぶ熱狂的なファンも多数存在するようです。
2013年8月末には総集編+後日談の形式の劇場公開版が発表されました。早速、封切り翌々日の月曜の午前中に立川シネマシティで観て参りましたぜ。平日の午前中だというのに席は一杯。ただし容易に想像出来る事ですが、私のようなオサ〜ンは皆無で、ほとんどの観客は大学生か、または学校をサボって見に来た高校生でありました。私の事を補導員、または補導を目的とした警察関係者と勘違いして目をそらす学生さん多数(笑)。そりゃそうですわな。普通、いい大人が平日の午前中から劇場でアニメ作品観るなんて事ありませんもんね。自分の息子世代の若者たちに囲まれながら、さめざめと泣いて参りました。いやあ、あれ観て泣かない人なんて居るのかしらん。
私たちがまともな点は、自分たちがまともじゃないって分かっている事よね。
村上春樹著「ノルウェイの森」(講談社)からのお言葉です。まともじゃないって云われても良いのであります。たかが映画。他人の目など気にせずに、好きなモノを好きな時に観て、好きなように泣きたいのでありますよ。ま、映画が終わって電灯がついても涙が止まらない私を見る若者たちの奇異の視線に晒され、確かにちょっと恥ずかしくはありましたがね。
いい歳こいたオサ〜ンがアニメ大好きという、とっても変態的なお話でありました〜。ふ〜、そこはかとなく、カミングアウト。
【つづく】
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