日、ピンク色のクラウンを街で見掛けました。テレビCMでは何度も見た事があったのですがね。実車を見るのは初めてでありましたよ。トヨタのクラウンと云えば「いつかはクラウン」というコピーに代表されるような国産高級車の代名詞的存在。そのクラウンにピンク色の設定を導入するなんて、はじめは冗談かと思いましたけれども、実車を見てみますと、自分が買うかどうかは別としまして、意外にも中々落ち着いた良い色でありました。
ハイソカーなる奇っ怪な和製英語に象徴されるように、かつて車は、移動手段という目的の他に、経済的ステイタスの意味も大きく込められた商品でありました。自分の欲しいスペックよりも他人から見てどう見えるかを優先して車種選びをしていた人も、たくさん居たのではないかなぁ。純粋に移動手段という機能だけを考えた場合、他の交通手段に比べて必ずしも全ての場面で車が優れている訳ではなく、逆に生活スタイルによってはコストばかり掛かかってお荷物になってしまう可能性すらあります。都会の若者の車離れが取り沙汰されていますが、こう考えるとそれも当然の帰結のようにも思えます。
車が、経済的ステータスという価値を失いつつある今だからこそ、ピンクのクラウンが出てきたのかも知れません。他人の目を気にしなければ、純粋に機能や自分の好みを追求出来ます。少なくとも数百万円もの投資をするにも関わらず自分の好みを優先しない事自体、逆におかしかったと申せましょう。
自転車には、元々ハイソカー的な経済的ステータスの要素は希薄であります。だからでしょうか、自転車のイベントなどで他の参加者の方の自転車を見てみますと、色から型から材質からまさに千差万別。フレームだけでもそうなのに、これにホイールやハンドル、コンポにサドルなどの組み合わせを考えますと、全く同じモノを探す方が無理という位であります。
価値観の多様性というものを痛感せざるを得ない。
夏川草介著「神様のカルテ3」(小学館)からのお言葉です。よくよく考えますと、私の自転車はショッピングピンクに塗装されたオーダー品。よくもまあ、いい歳こいたオサ〜ンがこんな色のフレーム作ったなぁと、他人からは思われているのでしょうが、これもまさに価値観の多様性ってヤツでありますよ。趣味の世界は、所詮は自己満足に始まり自己満足に帰結するもの。いわゆる良識をかなぐり捨てて、純粋に自分の好みに走るのも、自転車趣味の醍醐味の一つなのでありました。
【つづく】
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