々は普段、氾濫する情報の海の中で生活しています。新聞を読み、テレビを観て、ネットにアクセスし、メールをやりとりする。便利と云えば便利な生活と云えなくもありません。しかし、朝、本来の仕事に取り掛かる前に、夜のうちに着信し受信トレイに溜まっていた多くのメールを一つ一つチェックし、必要に応じて返信したり他所にメールを出したりして、気が付けば1時間以上経過している事なんてざら。このような状況を鑑みますと、逆に世の中、不便になっているのではないかと思わざるを得ない場面もしばしば御座います。ネットワークの発達のせいで、仕事に仕掛かるのに時間が掛かってしまう訳ですからね。はっきり云ってストレスが溜まります。
私にとってのサイクリングは、こうした過多な情報による呪縛を逃れて精神をリフレッシュする手段でもある訳ですが、普段の生活で染みついてしまった情報依存の性癖は簡単には抜けないもの。はなはだ逆説的な事に、リフレッシュの為の相棒であるロードバイクのピンクちゃんにはキャットアイ製の多機能メータが搭載されていて、移動距離、速度、ケイデンス(クランクの回転数計)、心拍数、消費カロリーが表示されるのです。勿論、平均値や積算値もすぐに分かります。
このような機器は、本来、レースを念頭に置いたアスリートの方達の為のモノ。私のようにトコトコとその辺を走り回るだけの貧脚のオサ〜ンにとって、詳細な走行データをリアルタイムに得る必要なんて全く無い事を知っているにも関わらず、こうした機器を手放せないのは、実は、意味ありげな数字を眺めている事で、不思議と安心感を得られるからに過ぎないのであります。
大切なのは何でもかんでも知ることじゃない。
宮崎駿著「出発点1979〜1996」(スタジオジブリ)からのお言葉です。程度の差は有るとしても、情報に囲まれていないと安心出来ないという考え方自体、四六時中スマホをイジっていなければ落ち着かない、ネット依存症の若い衆と何ら変わらないではありませんか。
嗚呼、それにしても高価な多機能メータを使いながら、心肺機能向上の練習に励む訳でもなく、峠で時速一桁Kmを表示させたままトコトコと進むだけの私って・・・。
【つづく】
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