にでも、いわゆるコダワリってヤツがあるものでありまして、私の場合、チェーンがそれに当たります。ええ。自転車のチェーンで御座いますよ。え?変なモンにこだわるなよ、ですって?良いじゃん、チェーン、大好きなんだからさ。
自転車のチェーンは、つなぎ目のないループ状になっているのが普通。輪になっている故、そのままではフレームから外せません。外す為にはチェーンカッターと呼ばれる工具が必要となります。実はチェーンはコネクトピンと呼ばれる専用のピンを圧入して繋いでいるだけでありまして、チェーンカッターは本当にチェーンを切断するのではなく、圧入してあるピンを押し出して連結を解除する道具に過ぎないのでした。
ところで私は、何しろチェーンフェチと読んで差し支えない程のチェーン好き。チェーンは常にピカピカの状態でなければ、到底納得出来ません。逆にドロドロに汚れたチェーンや錆びたチェーンを見ると気分が悪くなる位。チェーンこそ、いつでもピカピカでいて欲しい。その為にはチェーンを自転車から外して、灯油で洗うのが一番であります。勿論、外さなくても洗える事は洗えますよ。でも徹底的に綺麗にするとなれば、外した上で作業するに越した事はないでしょう。入れ歯だって口から出してから酵素入りポリデントで洗うでしょ。それと同じ事だってば〜。
KMCのミッシングリンクという商品は、一々チェーンカッターでコネクトピンを抜かなくても、手で繋いだり連結を切ったり出来る画期的な部品であります。私はロードバイクのピンクちゃんにも、折り畳み小径車のチビ号にも、このミッシングリンクを導入しています。こうする事で、気軽にチェーンを外して洗えるって訳。ピンクちゃんには10速チェーン用、チビ号には6〜8速用を使っています。ピンクちゃんの方が多段な分、若干チェーンの厚みが薄いのでありますよ。
サイクリングから帰ってくると、まずはミッシングリンクを外して、チェーンを自転車から降ろし、灯油にジャブ漬けします。汚れを浮かすのであります。10分程漬けた後は、ブラウンの電動歯ブラシで一コマ一コマ洗っていきます。私はチェーン洗い専用に電動歯ブラシを所有しております。歯磨き用とチェーン磨き用に、全く同じモノを2つ購入したのでありました。流石に新品のブラシでチェーンを磨くのは勿体ないので、歯を磨いて先が開き掛けたアタッチメントブラシを捨てないで取っておいて、チェーン用に使っていますがね。電動ブラシの振動によって発生する微細な泡が、汚れを引き剥がしてくれます。まさに画期的。
灯油&電動歯ブラシによる洗浄が終わったら、パーツクリーナで灯油を飛ばします。私の使うKMCの窒化チタンコートチェーンは、表面の金色のコーティングのお陰でそもそも汚れがつきにくいので、これだけの処理で、新品同様のピカピカに戻るのです。う〜む、やっぱりチェーンはゴールドに限るぜ。
脱脂の後は注油です。最近のお気に入りは、FINISH LINEのDRY TEFLON LUBE。おっと、直接ボトルから注したりはしませんよ。よく振ってテフロン粒を攪拌し、一旦それを小皿に出した後、水彩用の平筆で一コマ一コマ塗っていくのです。毛細管現象により、オイルがコマの内部まで行き渡るまで待って、もう一度塗り直します。この後はペーパータオルを使って、表面の余分なオイルを拭き取るのですが、やはり二度塗りすると、オイルの保ちが全然違うんですよね。DRY TEFLON LUBEは非常に軽めのパラフィン系の潤滑剤で、汚れを呼びにくいのが売りですが、保ちが良くないのが難点。ですから、二度塗りは必須な訳です。
こうした私の一連の作業をみて「そんな事しても一回雨に降られりゃお終いでしょ」とか「自転車のチェーンにそこまで気を遣っても、別に速くなる訳じゃねぇし」とか「ま、別にあなたがそれで満足ならば当方がどうこう口を挟む問題じゃないですしね」とか「きゃ〜嫌だ嫌だ、こういうチマチマした男って、私、生理的にダメなのよね」とか、様々なご意見を賜る訳ですけれども、はっきり申し上げて私も理性ではなく感性に従って作業している訳でして、論理的な回答を求められても、困ってしまうだけなのであります。
意味があるかないかという観点から物事を語るのはやめようよ。
三浦しをん著「桃色トワイライト」(新潮社)からのお言葉です。好きだからやってます。ただそれだけの事。何とでも仰いなさい。明確な理由なんて無いけど、そうしたくなっちゃうんだから仕方がないでしょ。それがフェチってモンなんだもん!嗚呼、我ながら、何か変態っぽいし・・・。
【つづく】
「今週のお言葉」の目次に戻る
「やすなべの目次に戻る」