近、とんと山に出掛けておりません。あ、ここで云う山とは登山の事ではありませんよ。ロードバイクで坂道を登っていないという意味であります。ロードバイクである以上、その行為はアスファルト道路におけるサイクリングに過ぎないのでありまして、登山をされる方から見れば「なんだよアスファルトの道を自転車で走るだけで『山に行く』なんて云うなよな」てな話になるかも知れませんが、これが結構キツいのでありますよ。
寒くなりますとどうしても山を避けがちになるなのは、仕方のない事でありましょう。坂道を登ると冬でもダクダクの汗を掻きます。この汗が、下りに入ると冷えて凍えてしまうのであります。低体温症になってしまう恐れも否定出来ません。箱根駅伝でフラフラになって意識を失ってしまう選手がいますよね。あれが低体温症です。冬に過度な汗を掻きそれが冷えるのは、実はかなりヤバいのであります。
結局のところ冬場は、汗を掻かないで体がポカポカしてくる程度の運動強度を保ちながら、自転車に乗らざるを得ません。かくして山方面へのお出掛けは一旦お休みし、平地のサイクリングがメインとなる訳であります。
私の住む日野市は、多摩丘陵と呼ばれるエリアに位置し、その名の通りどこに行くにも丘を越えて行かねばならない立地。丘を越えねばどこにも行けないのは、自転車に限らず自動車も一緒であります。
先日、かみさんを助手席に乗せ、稲城長沼から聖蹟桜ヶ丘に向かっておりました。稲城市立病院から桜ヶ丘カントリークラブに向かって、道は登りになります。通称、連光寺坂です。自転車で登るとそりゃもうキツいなんてもんじゃありません。今日は車ですから楽ですけれど、自転車で登ると本当に長くて本当にキツい坂なんだ、という話をしながら車を運転しておりました。
ところが、ロードバイクに全く興味の無いかみさんは、私の云わんとするところを理解出来ないようなのであります。
あのさ、長い坂とかキツい坂とか云うけどさ、率直な感想を述べさせて貰うと、全然普通の坂じゃん。急なところなんて無いし、そもそも距離だって短いし。Yasちゃんの頭の中だけで『キツい』ってイメージが先行して、斜度や距離に関する理解がおかしくなっちゃってるんじゃないの?
違うんだよKazちゃん(かみさんの名前)。自転車で走らないと分からないかも知れないけど、本当にキツい坂なんだってば。心拍数も180台キープになっちゃうし、それでいて距離も長いし。って、待てよ。車で走ると斜度の緩い距離の短い坂のように錯覚してしまうのだと思ってたけど、あれれ?もしかして、自転車での感覚の方が錯覚だってぇの?
理解なんてものは、概ね願望に基づくものだ
士郎正宗原作、押井守監督アニメーション作品「イノセンス」の中のお言葉です。云われてみれば、理解とは本来主観的な行為でありますから、それが恣意的な解釈であればある程、その度合いや内容は変わってしまうのも道理でありましょう。それにしても、連光寺坂を「斜度の緩い距離の短い坂」と表するなんて、Kazちゃん、ロードバイク乗ってみた方が良いんでねぇの?
【つづく】
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