崎にある藤子F不二雄ミュージアムに、以前から行きたい行きたいと思ってはいたのですが、何しろこの施設、完全前売り制度を採用している為に、自由に訪れる事が出来ません。10時、12時、14時、16時の入館時間を指定して、少なくとも前日までにチケットを購入しておかなければならないのです。しかも過度な混雑をさける為にチケットの販売数が限定されていてソールドアウト続出。晴れていれば休日は自転車で出掛けたい私にとって、こうした完全予約制の施設は「雨降って自転車で出掛けられないから、ちょっと行ってみようかな」という作戦が使えず、開館から1年も経ちながら、訪問を果たせずにおりました。
10月28日(日)は前々日の金曜日の時点で既に雨の予報だった事もあり、自転車でのお出掛けは早々に断念。藤子F不二雄ミュージアムに行きたいなと思いましたが、直前の土日の切符を押さえるのは至難である事は知っておりましたので、半ば諦め気分でローソンチケットサイトを確認してみたところ、奇跡的に、翌々日の日曜日の14時からの入場チケットが「残り些少」の状態でギリギリ購入可能となっているではありませんか!これは行くしかありません。たまたま巡ってきた幸運に感謝であります。
藤子F不二雄ミュージアムへは小田急登戸駅から専用バスに乗るのが便利です。ドラえもんや、おばけのQ太郎などのキャラクタが一面に描かれたラッピングバスに乗り、10分程でミュージアムに到着しました。館内に入り、設備の説明を受けた後、音声ガイド装置を受け取って、展示室に入ります。
わあ。1階の展示室は主に藤子F不二雄先生(本名:藤本弘先生)の生原稿を中心とした常設展です。カラー原稿のほとんどは水彩絵の具による着色がなされていて、光による退色を避ける為に、展示フロアの照明は全体的に落とされています。ま、これは、どの美術館でも同じなのですが。
フロアはドラえもんを筆頭に、うめぼし殿下、ジャングル黒べエ、おばけのQ太郎、パーマン、エスパー魔美、21エモンなど懐かしのキャラクタ達で一杯。更に大人向けのSF小作品群、例えば「みどりの守り神」などの展示も見逃せません。夢中になって藤子不二雄漫画を読み耽った幼少時代を鮮烈に思い出します。そういえば、ドロンパって居たなぁ。そうそう、バケラッタのO次郎。昭和40年生まれの私にとっては、堪らない光景であります。
周りを見渡しますと、私のような一人で来ているオサ〜ンもチラホラ。やはりほれ、ドンピシャの藤子不二雄マンガ世代でありますからなぁ。とは云え、日曜日という事もあって小さなお子様を伴った家族連れが多く見られます。勿論、小さなお子様も展示室内では、皆、割とお行儀良くしています。普通の美術館のように、完全にシーンとしている訳ではありません。ま、小さな子供にそこまで求めるのは酷と云うものでしょう。館内の照明も暗めに設定されていますし、全体として比較的静かですし、博物館や美術館に特有の緊張感に気圧されて何となく大人しくしているという事もあるのだと思います。
ところが一組だけ異質な方がいらっしゃるではありませんか。展示室内でお菓子を食べながら大声で騒いでいる子供と、ストロボ焚きながらバシャバシャ撮影している母親であります。勿論展示室内は飲食も撮影も禁止です。あまりの暴挙に、皆、唖然としておりますと、職員と思われる方がやんわりと、室内は飲食も撮影禁止である点、特に貴重な生原稿保護の為、ストロボは厳禁である点を説明しました。
その場は納得した振りをしていたその親子は、衆人環境にて注意を受けたバツの悪さを誤魔化したい気持ちもあったのでしょう。特に母親の方は、旦那さんと覚しき男性に対して、ブツクサ文句を云い続けています。「何よ!こっちはお金払って入ってるのよ!写真撮ったって減るもんじゃ無し。そもそも子供の為の施設なのに、がんじがらめの規則なんか作って!たかが子供のマンガじゃない!」
我が耳は聞き違いしや?
JKローリング著・松岡佑子訳「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」(静山社)からのお言葉です。ここは遊園地ではなくミュージアムです。児童館ではないのです。美術館であり博物館である以上、最低限の閲覧ルールが存在する事は必定。確かにこのミュージアムのテーマは、子供受けしそうなモノであります。故にだからこそ、子供達に美術館や博物館における閲覧ルールを教える絶好の場であるとも申せましょう。そもそも別のフロアに行けば、子供が遊び回れるいわゆる児童館的コーナーもきちんと用意されているのです。いやそれ以前に、藤子F不二雄先生の作品を「たかが子供のマンガ」と愚弄する人間に、ここに来て欲しくないというのがホンネであります。
こういう勘違い親子は、一定の割合で存在するのでしょう。だとすると三鷹の森ジブリ美術館も同じような状況に陥る可能性があります。嗚呼、時間限定で構わないので、未成年者入館禁止制度を作ってくれないかしらん。藤子F不二雄ミュージアムにしろ、三鷹の森ジブリ美術館にしろ、大人しか入れない静かな環境でゆっくり見て回りたいというニーズは確実に存在すると思うのですがね。休日の夜限定で大人専用時間を作るというのはいかがでしょう。ミュージアムカフェで軽いアルコールを出すのも良いアイデアかも。チケット単価を多少上げたとしても、行きたい人はきっと多いと思うんだけどなぁ。
【つづく】
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