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  今週のお言葉  

 

 先日、とある自転車関連のムック本を読んでおりましたら、クリート位置の調整のお話が載っておりました。あ、ご存じのない方に一応ご説明申し上げますと、クリートと云うのはシューズを自転車のペダルに固定する金具の事であります。スキーのビンディングのようなものとお考え頂ければ宜しいかと。クリートについては、現在、いくつかの規格が存在しますが、私はSPDというシマノの規格のモノを使っています。

 足をペダルに固定するのが怖いと感じるのは、初めだけでありまして、固定される事に慣れてしまいますと、逆にビンディングペダル無しでは過ごせなくなってしまう程、漕ぐ効率は向上致します。ペダルに足を固定する事で、踏むだけでなく引き上げる力も推進力に変える事が出来るようになるからであります。また、足を踏み外す心配がありませんから、クルクルと速くペダルを回す事が出来るようにもなります。

 ペダルに対しての足裏の位置調整は、シューズ側のクリート取り付け位置を変更する事で行ないます。これが思った以上にセンシティヴな作業。取り付け位置が1mmズレただけで、私のような者にもその違いがはっきりわかる程であります。(くだん)のムック本には、こうしたクリート位置の調整に関する特集が掲載されていたのでありました。

 まずは現在のクリート位置を正確に記録します。細いマジックで靴裏に印を書き込むと共に、それをデジカメで撮影。後でどうしようもなくなってしまった時に、元の状態に戻せるようにしておく為の方策であります。実は、現在のクリートは、マングローブバイクスでローラー台に乗せたボンバー号を漕ぎながら、大将に調整して貰ったのであります。折角、大将に決めて貰ったポジションですから、そのデータは保存しておこうという訳です。

 セッティングは日野万願寺基地を中心に、近所を試走する形式で行なう事にしました。万願寺基地内でクリート位置を変更し、基地の周りを実走して感触を確かめ、また万願寺基地に戻って位置を変更、という感じで調整を繰り返していきます。まずはクリート位置をつま先側にズラしてみました。以前よりもつま先寄りでペダルを踏む事になります。この状態で浅川サイクリングロードを走ってみますと、フムフム、かな〜り良い感じでペダルが回せます。

 ある程度セッティングが煮詰まって参りましたので、この設定で登りも試してみる事にます。聖蹟桜ヶ丘駅前から連光寺坂を全力で登ってみます。すると、あれれ。ふくらはぎが攣り気味になってしまうではありませんか。こりゃいかん。こんな距離こんな場所で足が攣った事など今まで一度も経験ありません。そう云えばムック本にも、クリートを前に出すとふくらはぎの負担が増えて、人によっては攣りやすくなると書かれていましたっけ。

 一旦、万願寺基地に戻り、今度はクリート位置を後ろに下げてみます。こうした調整の為に、万願寺基地と連光寺坂を3往復も致しました。本当は工具を持っていって現地で調整すれば良いのですがね。いや実際には常に応急処置用の折りたたみ工具は携帯している訳ですが、路上での調整は一切行わず、敢えて万願寺基地まで戻ってセッティングを変更し、また路上に試走に出るという行為を繰り返したのであります。

 やむを得ない緊急の修理以外、出先では処置を行わないのが私のポリシーです。これは自転車に限った事ではなくオートバイでも何でもそう。応急処置用の工具は応急処置用に過ぎず、精度もいい加減ですから、ミスの確率も非常に高くなります。例えば出先でボルトをなめてしまったとしたら、もうどうする事も出来ません。これが万願寺基地であれば、リコイルを掛けてボルトを抜く事も出来ますし、そもそも精度の高い工具を使いますからこうしたミスの確率は著しく下がります。しかも万願寺基地には、あらゆる太さ、長さの新品のボルトが在庫されていますから、多少のミスならどうにでも対応可能という訳です。例えミスによる故障が発生しても「どうやって帰ってこようか」という事で悩む必要はありませんしね。本当に困ったら車に積んでマングローブバイクスYasZone以外のサイトにジャンプしますに持っていけば良い訳ですし。

 連光寺坂との往復を繰り返したのはそれだけの理由ではありません。万願寺基地から聖蹟桜ヶ丘までは平地、そこから連光寺坂頂上までは急坂を登り、南多摩駅までは緩い坂を下ります。南多摩駅から折り返して緩い坂を登り返し、連光寺坂頂上から聖蹟桜ヶ丘までは急坂の下り。そこから万願寺基地までは再び平地を走る事になります。このコースを往復するとあらゆるシチュエーションを試す事が出来るのであります。登りが良くても平地で違和感が出るかも知れませんし、急な下りを60Km/h位で走る事で、120rpm以上の速度でクランクを回す試験も出来ます。クリート調整にはもってこいのルートなのであります。

 丸一日掛かって、ようやく納得の行くポジションが得られました。調整を繰り返した結果、靴裏には様々な色のマジックで何本もの線が引かれた状態になりました。ところがですねぇ。実はちょっとショックな結末だったのでありますよ。これだけ時間と労力を掛けて微調整を繰り返したにもかかわらず、結果として最終的に最も納得出来たクリート位置は、以前、マングで出して貰ったポジションと1mmの違いも無く、ピッタリ一緒だったのであります。

 一に止まると書いて、正しいという意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。本当に正しい事というのは、一番初めの場所にあるのかも知れませんね。

 夏川草介著「神様のカルテ」(小学館)からのお言葉です。孫悟空がお釈迦様の掌から出られなかった様に、自分なりに色々試しても、結局、マングの大将のセッティングを越える事は出来ないのでありましょうか。一日掛けて書き込んだ様々な色のマジックの線をパーツクリーナを染み込ませたウエスで拭きました。これで完全に元に戻った訳です。今日一日のあのセッティング&試走の手間は何だったんでありましょうか。嗚呼、この話を聞いた時のマングの大将のニヤニヤ笑いが目に浮かぶようでありますよ。ちぇ。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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