線を張ると申しますか、先に言い訳しておくと申しますか、いかに今日の自分はダメダメであり、故に手加減して欲しい、という旨を周りにアピールする人って割といらっしゃいます。
実は私もその一人。だって集団での移動において明らかに私が足を引っ張ってしまいそうな時、「私、坂はダメダメなんで、先に行って、待っていて下さい」とか「ついて行けそうにないんで、今日はゆっくり登って貰えますか」とか、事前に伝えておく事は、やはり一種のエチケットでもあるからです。
ところがエチケットとしてのアピールではなく、周りを油断させる為にダメダメのフリをする方がいらっしゃいます。これがあまりにも露骨過ぎるとなると、ちょっと格好悪い。
いやぁ夕べ呑み過ぎちゃってまだ頭ガンガン痛いし、しかも先週からちょっと膝が痛くて中々本調子にならないんですよねぇ。だからね、今日はバトルは一切無しの、あくまでもタラタラサイクリングって事でお願いしますよ。峠なんて本当に久しぶりだし、登れる気がしません。タイム?滅相もない。とばす気なんてありません。それどころか足つかないように気をつけなきゃ。待てよ。サイクリングだもの、足つき有りでいきましょうよ。写真撮りながら登ります。ええ。サイクリングですから。ね。良いですね。今日はバトル無しで楽しく行きましょうね。ねね。約束ですよ。
ここまで言いながら、いざ登り始めたら、ストップウォッチをリセットするや否や、全力で立ち漕ぎしながら前方に消えていく。何なんだよさっきの言い草は!しかも峠の頂上でまたも続きが始まるではありませんか。
いやぁ〜みなさんに迷惑掛けないようにと、一生懸命登りましたよ。余裕ゼロ。心臓なんかバクバクです。完全に限界でしたね。必死でした。途中何度も死ぬかと思いましたもの。二日酔いだし膝は痛いし、足ついちゃおうかと何度も思いましたよ。死ぬ思いでした。いや何度か心臓止まりかけたかも。死ぬ〜死ぬ〜って思いながら漕いでました。いやマジで今日はバトルは無しにしましょうね。これ以上やったら本当に死にますって。いやマジで。
あら、そう。なら、死になさい。
士郎正宗原作、押井守監督作品、攻殻機動隊の中の、草薙素子少佐のお言葉です。こういう振る舞いをする輩に限って、実は意外にも憎めない気のいい奴だったりして、また一緒にお出掛けしちゃうんですよねぇ。ここまでやらかして嫌われないって、一種の人徳かも。
こういう人って一定の割合で存在します。「やべぇ試験勉強全くやってねぇ。留年確定だ。終わった」とか言いつつ高得点をマークしちゃうタイプ。でもこういう人の振る舞いって、事前に何となく分かると申しますか、何か感じますよね。え?どうやって感じるのかですって?
・・・そう囁くのさ。俺のゴーストが。
【つづく】
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