しい自転車には、あえて旧規格と云うべきスレッドステム、ホリゾンタルなクロモリフレームを採用しました。最新のグラマラスなカーボンバイクも格好良いですが、折角のオーダーですから、昔からの夢を実現させたいと考えたのです。こうして結局、一見クラシカルなシルエットを持つロードバイクを注文する事になったのでありました。

　今回のオーダー車は単なる復古指向のモノではありません。確かにシルエットは旧車然としています。しかしグロッシーグレーの新型アルテグラや、フィジークの最新サドルなど、随所に新しい部品を搭載していますから、いわば「ネオ・クラシカル」とでも呼ぶべき自転車なのであります。

　ひとつ覚えておいていただきたいのですが、ものごとは見かけと違います。

　村上春樹著「1Q84」（新潮社）からのお言葉です。実は私は、こうした「羊の皮を被った狼」的なモノを好む傾向が強く、今回のオーダー自転車以外にも、例えば、オートバイについても、似たような嗜好傾向があるのです。

　私の所有するカワサキZRX1100は、かつて王者エディローソンが駆ったZ1000R、通称ローソンレプリカの復刻版とも云うべきシルエットのオートバイであります。元となったZ1000Rは空冷エンジンでしたが、ZRX1100は水冷のDOHC16バルブエンジンで武装されております。シェイプは私が高校時代に憧れた30年前のクラシカルなモノでありながら、エンジン出力は軽く100馬力を越えます。高出力な車体を安全に減速させる為に、トキコ製の対向12ポット油圧ダブルディスクブレーキを搭載しており、動力性能は新型にも引けを取りません。

　私の所有する自転車もオートバイも、いわば「羊の皮を被った狼」でありますが、これらのマシンを駆る私自身は「豚の皮を被ったラビットちゃん」でありまして、何ともヘニョピリンな、しまらない話なのであります。

【つづく】

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