入観や思い込みを重視し過ぎる行為は、正確な情報把握を妨げ、故に、的確な判断を阻害する事に繋がります。だからと云って検証に時間を掛け過ぎれば、逆に実行の機会を失いかねません。
東日本に未曾有の被害を与えた東北関東大震災。あらゆる想定を越えた規模のこの災害において、我々はこうした難しい判断を突きつけられました。そしてその状況は今もなお、継続中であります。
先入観を否定すれば、あらゆる予測は不能となります。ある仮説が先入観に過ぎないのか、それとも正しいであろう予測として今後の行動の前提とすべきモノなのかどうかは、ある意味、紙一重であるとも申せましょう。両者の切り分けは、非常に微妙であります。
先入観は真実を遠ざける。
2009年に劇場公開された吉浦康裕監督のアニメーション映画、イヴの時間の中のお言葉です。先入観に囚われ過ぎず、客観的な情報を待ちつつも、同時に機会を逃さぬ迅速な判断を行なう。非常に難しい行為である事はわかっています。しかしこう云った判断力や行動力、更にはそのバランス感覚こそが、リーダに求められている資質である事も又確かであります。
一般的に、最初から予算も期間も十分な余裕を与えられたプロジェクトなど皆無です。様々な経営判断しかり、我々が実現しなければならないほとんどの事象は、せっぱ詰まった状態のモノばかりであると云えましょう。
とはいえ今回の東北関東大震災における、例えば枝野幸男官房長官らのリーダに課せられた責任の逼迫度は、従来のモノに比べて桁違いに高く、その判断にともなうストレスは相当なものであろう事は想像に難くありません。
些細な事ながら、計画停電の予定の発表を睨みつつ、本日の営業を行うべきかどうかを判断し、より素早くカスタマに連絡しなければならないという、自営業者としての私の立場も、ごくごく小規模な責任範囲の話でありながらも、収入にも社会的責任にも直結する判断でありますので、十分な緊張感を持って対応している次第であります。
【つづく】
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