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  今週のお言葉  

 

  

 初めての峠を自転車で登っていると、この峠はどこまで続くのだろうかと不安になる事があります。勝手知ったる地元の峠ならばペース配分も出来ますが、初めての場所ではそうも参りません。

 トコトコと一人で漕ぎ進んでいくと、途中で休憩している自転車が一台。これを口実に、私も休憩する事に致します。私の場合、登坂中は常に足を着く理由を探し続けていますから、まさしくこれ幸いとばかりに休憩中のローディに話し掛けます。

 お互い自転車を趣味とする者同士、すぐに打ち解け、自転車談義に花が咲きます。これもツーリングの大いなる楽しみの一つ。以前出場したサイクルイベントの事、新しい部品の事、カーボンは本当に良いものなのかなんて話、お勧めのタイヤの事、美味しい食べ物屋さんの事。あたかも旧知の間柄の如く、浜の真砂はつきねども・・・であります。

 私のようなトコトコ派というのは世の中に結構いらっしゃるようで、お互いにお互いの臭いを嗅ぎ分けるんでしょうなぁ。会えば一発で分かるのであります。アスリート系のローディを引き留めるのは気が引けます。ところが私を含むトコトコ派は逆に引き留めて貰う事を欲しているのでありますよ。

 こうしてひとしきり会話を楽しんだ後、じゃ、そろそろ行きましょうかという段になって、「ところで頂上まで、あとどれくらいですか」と聞かれる事がしばしば御座います。私とて初めての峠ですから、どの位かと聞かれても答えられません。それ以前にそもそも残りの距離を聞いたところで登りが楽になる訳でもなく、あまり意味のない質問だとは思うのですが、残りの距離を聞く方の多い事多い事。

 何でもいいんだよ。何でもいいから、人は信じるものが欲しいんだよ

 浦沢直樹作、20世紀少年(小学館ビッグコミック)よりのお言葉です。あとどのくらいですか?もう少しですよ。こんな会話から何ら具体的な情報は得られないのに、ついつい聞いてしまうのであります。もう少しってどの位少しなの?こんな不確かな情報にも思わずすがってしまう心の弱さ。アスリートの方とは異なり、我がトコトコ派は、愛すべき弱き人種なのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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