の観測史上最も暑かった昨年の夏を、懐かし〜く思い出す程、寒い日が続いております。寒いと自転車でお出掛けしようというモチベーションは、急速に萎んでしまいます。一旦出発すれば、じきに体は温まり、爽快感に満ちたサイクリングになる事は分かっちゃぁいるんですがね。暖かい部屋を出るのが、どうしても億劫になってしまうのであります。
弱気の虫に鞭打って冬の自転車散歩に出掛けますと、あぁ、やっぱり出掛けて正解だった、外は気持ち良いや、と気付きます。空気が澄み切っているんですなぁ。殊に小仏峠などの山間部に入りますと、空気の新鮮さはより顕著になります。路肩には雪が残り、気温は氷点下。ピンと張りつめた空気の中を頑張って登坂しておりますと、汗が吹き出て参ります。比喩ではなく実際に頭から湯気が出る。こんな冬のサイクリングも私は嫌いではありません。
夏ではこうはいきません。特に、激坂区間で時速一桁Kmまで落ちている時、粘度の高い、一種ゼリー状とも呼べるどろんとした空気が、体にまとわりつく感じが致します。
もっと軽い空気がほしい! せめて、自分の吐いた息がまじっていない、新鮮な空気がほしい!
安部公房著「砂の女」の中のお言葉です。夏の激坂登坂ってまさにこんな感じ。それに比べれば、冬の凛と澄み切った空気は、登坂自体を楽しむには最高の環境であります。寒いから今日はやめとこうかなぁという弱気を振り切って、頑張って出掛けてみようと決意する私でありました。
【つづく】
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