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  今週のお言葉  

 

 脂肪燃焼を最も効果的に行なう為には、心拍数を上げ過ぎない事が重要と言われています。AT値以上の高心拍でのいわゆる無酸素運動は、筋肉内のエネルギーだけを消費します。筋肉内に蓄えられるエネルギーはごくごく限られていますから、こうした無酸素運動は短時間しか持続出来ません。短距離走的なエネルギーの使い方がこれに当たります。

 AT値以下の心拍数では有酸素運動になります。エネルギー+酸素→二酸化炭素+水、といういわゆる「燃焼」がおこる訳です。ただしここでもエネルギーの供給源の違いを意識する必要があります。AT値以下とは言え、高い心拍数での運動は血中のグリコーゲンを優先的に燃焼させます。グリコーゲンの血中含有量は限られていますので、この比較的高負荷な運動も、糖分補給無しでは持続出来ないのです。

 比較的低めの心拍数における運動においてのみ、エネルギーとして脂肪が燃焼します。ダイエット、すなわち脂肪燃焼の為には、心拍数を上げてはいけないのです。しかも脂肪の燃焼量は時間に比例しますから、軽い運動の長時間の継続が最も効果的という事になります。運動をすれば痩せると闇雲に盲信して、高心拍の運動を短時間行なっても、実際には脂肪はあまり燃焼しないのであります。

 そういう観点からも、自転車に乗って出掛けるいわゆるサイクリングは、ダイエットには理想的な運動であると云えましょう。休日にサイクリングに出掛け、8時間自転車を漕いでいたというのは、割と普通の事であります。例えば日野万願寺基地から甲州街道を西進し、大月から富士吉田経由で山中湖に出て、道志街道経由で戻ってくると丁度160Km。平均時速20Kmでゆったり漕いだとして、この程度で8時間の運動になる訳です。

 これがジョギングですと、とても8時間走り続ける事など出来ません。ね?サイクリングは比較的「軽い」運動なのであります。

 辛い運動、例えば腕立て伏せなどでは、非常に明確にかつ短時間で限界が訪れます。無理に続けようとしてもペシャンとつぶれてしまったりしてね。ところがサイクリングのような軽い運動においては、限界に至る過程も徐々に進行するのです。徐々に進行するからこそ、限界について考える時間があります。サイクリングの場合、下りは漕がなくても進む為、運動ではありません。回復であります。限界が来るとすれば登り坂な訳ですが、それが本当の限界なのかは、はなはだ疑問が残る事がほとんどであります。クヨクヨ考える時間がある事。この事が自転車における「限界」を曖昧にしていくのであります。

 ひゃ〜疲れた疲れた。夕焼け小焼けまでは調子良く上がってきたんだけどな。陣馬高原下バス停まででだいぶ体力消耗しちゃったな。それにしてもだいぶ登ったな。フラフラだよ。心拍175bpmだ。辛い。辛いよ。この強烈な登りはどこまで続くんだろ。足付いちゃおうかな。誰も見てないしな。鬼の和田だもんな。足付いても仕方ないよな。俺、今日、初和田だし。駄目だ。スピードが時速5Kmだ。足付きたくない。蛇行するしかないな。サングラス取ろう。曇ってきちゃったよ。え?抜かされたよ。挨拶返したいけど声が出ない。何だあいつのスピードは。速過ぎる。どうなってるんだ。そうだ。きっとあれば電動ロードバイクだ。そうに違いない。まてよ。電動である筈がないな。ドロップハンドルの電動なんて聞いたこと無いし。そうか。分かった。オリンピック選手だ。彼はオリンピック選手なんだ。オリンピック選手の秘密特訓なんだ。じゃ仕方がないな。オリンピックなんだから速くて当然だ。お。直登坂が終わって、やっとトラバースに入るようだな。ちょっとは楽になるかな。斜度が収まればいいんだけどな。ここまできつかったからな。げげ。何だこの左ヘアピン。おおぉぉぉおいおいおい。登れないよ。こんな坂登れない。ギア落とさなきゃ。あ。ギアが無い。インナーの27Tだよ。既に最軽ギアだ。駄目だ。維持出来ない。右側通行しちゃお。左側は斜度がきつくて登れない。何だこのでこぼこの路面。ロードで来る道じゃねぇな。ひ〜。トラバースに入ってもこの斜度かよ。時速4Km。心拍182bpm。限界だ。暑い。脳の中まで暑い。でも頑張ろ。トラバース道だもん。等高線に沿ってる筈だもん。もうすぐ楽になる筈だもん。長いなこのトラバース道。そろそろ右に折り返してもいいのにな。どこまで続くんだ。林の中だから眺望は利かないし。あ〜ん。疲れたよぅ。心臓が飛び出しそうだよぅ。こりゃ既にスポーツじゃないな。修行だよ。逆に体に悪いよ。寿命が縮む。足付きたくない。足は付きたくないけど健康の事を考えると足を付くべきかも。だってこのままじゃ死んじゃうよ。足付いちゃおうかな。死ぬのはイヤだもんね。もっと生きていたいよ。あ。見えた。やっと折り返しだ。右ヘアピン。足付かないで良かった。頑張るぞ。比較的さっきよりも楽じゃん。トラバース道だもんな。そんなに斜度がある訳無いよな。それにしても眺望ねぇなこの道。どこまで続くのか見当もつかん。げげげのげ。またすげ〜左ヘアピンだ。何だこれ。後輪が滑るぜ。自転車でホイルスピン。こんなの有りか?またまた右側通行で凌ごう。左側は登れない。ウィリーしちゃう位の斜度だもの。心拍計ぴーぴーうるさい。時速5Km。心拍188bpm。限界だ。ホントに限界だ。トラバース道だってぇのにこの斜度だもの。あ。金網が見える。あそこが折り返しか?あそこまで頑張ろ。あそこまで。そうすれば折り返しだ。あと5m。頑張れ俺。あれ?違うよ。折り返しじゃないよ。まだトラバース道は続くよ。ひ〜。もう限界。あ。あ。もう駄目。でも距離から云うともうすぐだと思うんだけどなぁ。明るいな。林が切れてる。あ。左側に下界が見える。この道で初めて眺望が開けたよ。写真撮ろう。良い景色だもの。足を付きたいんじゃない。休みたいんじゃない。負けた訳じゃない。写真を撮らなきゃいけないだけさ。あ。あ。もう駄目。ホントに駄目。いいよね。仕方ないよね。写真の為だもの。あ。あ。もう駄目。ホントにもう駄目。

 もしも限界があるとするならば、それはあきらめた瞬間でしょう。

 刑事ドラマ「相棒」より、水谷豊扮する杉下右京のお言葉です。本当の限界であれば、その場でひっくり返る筈です。しかしほとんどの場合そうはならず、単に足を付いてしまうだけ。まだ立って居られる余力はあるのです。限界とは体力が尽きる事ではなく、心が折れる事だったのであります。

 もしも限界があるとするならば、それはあきらめた瞬間でしょう。

 至言であります。生まれ持った能力も重要な要素。でも努力や練習でパフォーマンスをアップさせる事が出来る。その上での限界は、物理的な要素よりも精神的な要素によって決定される。仕事も勉強も和田峠も早漏も、全て同じロジックなのかも知れないなと気付かせてくれた和田峠って、やっぱり「鬼」なので御座いました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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