あれこれ memorandoms やすなべ categorized Yasの状況 activities Yasについて about Yas Yasへの連絡 contact us

  今週のお言葉  

 

 初めてのメンバと自転車でツーリングに出ている時、かなり疲れてきていても、「疲れたから休もうよ」と言い出せない時があります。勝手知ったる仲間内ならばそんなに気を使う事もないのですが、初対面の方に対してはそうもいかない事もありましょう。格好をつけるというのともちょっと違います。こうしたツーリングには適切なペースというものが歴然とあり、それを崩すまい、迷惑を掛けまいとする故に、この様な行動をとってしまう事になるのです。

 本来すがりたい筈の時に逆に虚勢を張るという行動は、ただでさえ疲れているにも関わらず、更に無駄に体力を消費してしまう事に繋がります。周りの人は、この人は体力に余裕があるのだなと認識し、しかし実際には無情にも、逆にみるみる残りの体力は減っていく。この両者の状況の乖離は、やがて急速で級数的な崩壊に繋がる事になってしまいます。

 疲れた時に「疲れたよ〜。休もうよ〜。」と云っていれば、体力や技量の差も自然に認識して貰え、次の休憩はもっと早いタイミングで取られる事になるでしょう。正直に云えば自然な気遣いをして貰えます。逆に迷惑を掛けまい心配を掛けまいと考えた故に、結果としてより大きな迷惑や心配を掛けてしまうという矛盾。みんな理解しているのです。でも頑張り過ぎてしまう。こうした行動は、人が人を気遣おうとする以上、絶対に無くならないものの一つであるのかも知れません。

 人間というのは、いかにも辛そうにしている時より、見た目には明るく振る舞っている時のほうが、その内側にある悲しみは深いというからねぇ。

 東野圭吾著「ダイイング・アイ」の中の言葉です。こうした状況を打破する為には、強者の側から先に気遣う行動を取る事が絶対に必要です。追い込まれている側は虚勢を張ってでもそれを悟られないように振る舞いますから、余裕のある側が先回りして休憩を提案するしか解決策はありません。しかしその気遣いすら、「大丈夫ですからお気遣い無く」という、虚勢に由来する行動により、否定されてしまう可能性を孕んでいるのです。笑顔で、大丈夫と言われれば、実際のところ、本当に大丈夫なのかそれともそれが虚勢なのかを見分ける事は非常に困難でしょう。それもその筈。そもそも当事者はバレないように笑顔を作っている訳ですから。こういう状況においてはあまり深読みせず、相手の言葉通りに捉えて行動するのが大人の嗜みと云えるかも知れません。勿論、あらゆる可能性は想定し続けるという前提でネ。

 それにしてもセンシティブな問題です。自転車に限らず、仕事の事、お金の事、何にでも共通する問題でしょう。鬱病が級数的に進行するのも同じロジックによるのかも知れません。どこまで気を遣うべきか、全てはバランス感覚。ホンネだけでしゃべればギクシャクします。しかし気遣いも、過ぎたるは及ばざるが如し。話すにしろ聞くにしろ、人と人がコミュニケートするのって本当に難しいですね。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

「今週のお言葉」の目次に戻る

「やすなべ」の目次に戻る

Copyright(C) by Yas/YasZone