は昭和40年生まれで御座いまして、武田鉄矢主演の「3年B組金八先生」をオンタイムで視た世代であります。オンタイムもオンタイム、何しろ劇中の中学3年生たち・・・、田原俊彦、近藤真彦、野村義男、三原じゅん子、鶴見辰吾、杉田かおる、に対して一年遅れの中学2年生だったのですからね。
金八先生の放映が始まったのは、確か昭和54年(1979年)の10月からだったと記憶しています。中学3年生の苦悩をそのまま実際の時間軸に沿ってドラマ化し、内申書についてのトラブル、未婚の妊娠、不良化、受験勉強への焦り、高校入試合格発表、卒業式、金八先生との別れ、という具合に話は進みます。視聴者である我々が思春期まっただ中だった事もあり、感情移入しまくりでありました。
むしろ作中人物等と同級の、私よりも一つ上の学年の人よりも真剣にどっぷりとドラマの世界に浸れたようにも思います。ドラマはそのタイトルの通り中学3年生の苦悩をテーマにしている訳ですが、実際の中学3年生は自分自身の高校受験スケジュールと重なってしまいますから、ドラマに熱中するどころではなかったのではないでしょうか。
鶴見辰吾扮する宮沢保が、杉田かおる扮する浅井雪乃を妊娠させてしまったり、しかも中学在学中に出産する事になったりといった、現実の生活とは掛け離れていた設定もありましたので、一部の親には不評であったとも聞いています。しかし、好きな人との純愛を貫き通す姿勢は、多くの中学生の共感を確かに得ていました。
当時まだ家庭用ビデオのある家なんてほとんど無い状態でしたから、ドラマは放映時間を待って、リアルタイムに視るしかありませんでした。当時、私の同級生はほとんどがこのドラマに夢中で、土曜日の朝といえば金八先生の話題で持ちきりでありました。あ、一応お若い方にも分かるように解説致しますと、当時は週休二日制ではありませんでしたので、土曜日も学校があったのですよ。
金曜日の夜8時からの放送でしたので、「金八」と命名されたのだそうであります。当初はかなりいい加減な設定で開始されたのですね。
武田鉄矢扮する坂本金八先生、とにかく語るんであります。授業のほとんどが人生訓といっても過言ではありません。実際の中学の先生と違って、やはりそこはドラマですから、かなり演出も入っているのでしょうが、非常に共感出来る事をおっしゃるんですな。こんな先生に受け持たれたい。こんな先生にならどんな事でも相談出来るのに、と思いましたもの。
あのね 立派な人になんかならなくてもいいの 感じの良い人になって下さい
泣きましたねぇ。我々は悪名高き、全県統一実力試験世代です。静岡県の中学生全員が共通の実力試験を受験して、その結果で成績をつけようという荒っぽい時代。偏差値至上主義的な風潮の中で、こんなに人間的な言葉を耳にする機会など、中々ありませんでしたからなぁ。その後の生活の中で、金八先生のお言葉を思い出す場面まではありませんでしたが、良い事言ってたよなぁという印象は常に持っていましたし、あんな大人になりたいなぁとも強く思っておりました。
そういう意味では我々は、真の「金八世代」だったと云えそうです。だって、多感な中学時代に影響を受けただけではなく、結婚式には海援隊の「贈る言葉」を歌いあった世代なのですから。金八先生は、今でも我々にとって特別な存在なのであります。
【つづく】
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