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  古本屋でお宝をゲットしました  

 お出掛け

太宰治 斜陽
初版本です

 年のゴールデンウィークは、特に旅行に出掛けたりすることもなく、近場をウロウロして過ごしました。私がきっちり7連休だったのに対し、かみさんは不規則に勤務日と休暇が混じっている状態でしたので、二人で一緒に出掛けたり、はたまた独りで行動したりと遊びの形態は様々でしたが、お陰様で充実した休暇を過ごす事が出来ました。

 かみさんと二人で渋谷に出て三軒茶屋から東急世田谷線(チンチン電車みたいな可愛い電車です)で豪徳寺にお参りし小田急線の経堂(きょうどう)までブラブラ散歩したり、独りで上野の国立科学博物館で開催中の「人体展」を見物に行ったり、かみさんと二人で立川のIKEAに出掛けて程久保基地リビング改造計画に基づいたソファーのリサーチを行なったり、私の若い友人であるHRD君の御長男誕生を祝ってヤツと立川のBARで祝杯を上げたり、かみさんと二人で下北沢を探検したり、更にはこうした遊びの予定の合間を縫うようにして陣馬街道の鬼の和田峠に2回も出掛けて(しかもファットバイクのデブ号で)無人販売所でタケノコを購入したりしました。

 こうして大いに休暇を楽しんだのでありますが、特筆すべきは下北沢探検の成果でありましょう。下北沢は小田急線と京王井の頭線のジャンクション駅で、駅周辺に網の目状に小さな商店がひしめき合っている魅力溢れる街。全体として古着屋や雑貨店が多く、一般にはいわゆる若者の街と認識されておりますが、我々のような年長者がブラブラしても十分楽しい場所であります。

 迷路のような街をフラフラと探索しておりましたら、一軒の古書店を見つけました。ざっと棚を見回しましたところ、心理精神医学、宗教論、フェミニズム・女性史、建築デザイン、山岳、鉄道などが専門の店のようです。私は普段、文芸書を中心に読んでおりますので、この古書店はちょっと畑違いなのですが、実はこうした畑違いの古書店こそが、掘り出し物に出会う為の狙い目だったりするのでありますよ。

星新一著 進化した猿たち
上は新潮文庫版
下は早川書房版の初版本

 古書店は古書を販売すると同時に、古書の買い入れも行なっています。古書店に価値の高い蔵書を売る場合、その系統の書籍を専門としているところに持って行くのがセオリーと云われています。本の価値を正確に知っている店舗の方が、適正な高い価格で引き取ってくれる事が多いからです。ところが実際には、古書店への売却は、こうした単品の持ち込みばかりではありません。例えば本の所有者が亡くなって、残された家族が一括での処分を望む場合など、その古書店の得意分野以外の書籍も一気に買い取ってもらう事になるからです。結果として古書店は自分の専門外の書籍を持て余す事になり、これを古書店組合加入店専用のオークション(交換会)に出品するのです。

 ブックオフ等の大型チェーン店を除いた一般的な由緒正しい昔ながらの古書店は、本棚に入りきれない書籍を束ねて床に積み上げてあります。ご存じのない方は、これらの本を、買い入れたばかりで未整理の古書であると勘違いしがちでありますけれども、そんな事はありません。その証拠に、束ねてある本を抜いて裏表紙を確認してみて下されば、販売価格が提示されているのが確認出来る筈です。束ねて床に積み上げられた本は、既に値付け処理が完了した売り物の本。未処理の買い取り本は、お客の目に触れない店のバックヤードに積んであるのが普通なのであります。

 この束ねられた本は、一応販売目的で置いてはありますが、それはあくまで一時的なモノで、古書店オークションに出そうと計画されている書籍であります。故に早めに買わないと、次の来店時にはそっくり無くなっている可能性があるのです。自分の欲しているモノを専門外としている古書店では、こうした束ねられた本の中にお宝を発見出来る可能性が潜んでいます。専門外故にその本の市場価値を正確に把握していない事も割と多く、市場価格よりも安い値付けになっている事もしばしばなのです。と申しますのも、古書店組合加入店専用のオークションは、一冊ずつ入札するのではなく、山積みにされた本の前に封筒が置いてあって、その中に店名と入札価格が書かれた紙を入れる方式。つまり抱き合わせオークションなのです。オークション出品対象の束ね本はそこへの出品対象ですから、比較的安い値付けになっているのが普通という訳であります。つまりは卸値ベースの価格である事が多いって訳。

 さて今回は束ね本の中に、太宰治著「斜陽」(新潮社)を発見しました。四六判よりも小振りな軽装版で、戦後の物資欠乏期に多く見られた装丁です。奥付のページが無く、「雑誌『新潮』」昭和廿二(22)年七月號より十月號に連載」、と書かれているのみ。そのせいでしょう、800円という安い値段がつけられています。奥付が無いのは不自然ですが、終戦直後の本の場合、劣悪な紙を使っている事が多く、ページが癒着しているのは比較的良くある事。この部分は後で確認するとして、取り敢えず購入する事にします。

 もう一つの発見は、星新一著「進化した猿たち」(早川書房)【昭和43年2月初版】が2,000円で出ていた事。実は私は既に「新・進化した猿たち」(早川書房)【昭和46年3月初版】を所有していて、これでセットで揃った事になるのです。「進化した猿たち」と「新・進化した猿たち」をまとめた形で、新潮文庫から「進化した猿たち1〜3」として3分冊で再販されていたのですが、今ではこの新潮文庫版も絶版。私は星新一氏を敬愛していて、この「進化した猿たち1〜3」(新潮文庫)も、高校時代に購入したモノを今でも大切に所有し愛読しております。それでも尊敬する星新一氏の早川書房版ハードカバーを是非手に入れたいと思い、折に触れ探していたのでありました。

 古本屋を出て、近くのバルで食事を摂りながらお宝の確認です。やはり思った通り、斜陽はページ固着していて、そ〜っと剥がしてみると奥付ページがありました。昭和二十二年十二月初版、太宰の検印もあります。うしし、お宝ゲットでありますよ!思わずかみさんと、グラスワインで乾杯してしまいました。鹿肉のハンバーグを食べながら昼間からワインを頂く。しかもゲットした「斜陽」は初版本である事が判明。まさに至福のランチでありましたよ。

 太宰治著「斜陽」(新潮社)【昭和22年12月初版】と、星新一著「進化した猿たち」(早川書房)【昭和43年2月初版】を何と3,000円未満で手に入れる事が出来ました〜!大いに遊んだ上にお宝をゲット出来た、最高のゴールデンウィークでありました〜。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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