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  古本と侮るなかれ  

 物欲

 本なんていつでも買えるじゃん。例え本屋にモノが無くても、版元から取り寄せれば良いんだから。普段、あまり本を買わない方ほど、こうした誤った考えをお持ちのようであります。しかし実は、出版業界全体での重版率は20%程度と云われているのをご存じでしょうか。書店に並べられる書籍の実に8割が、増刷される事無く絶版となるのです。本の多くは、タイミングを逸すると手に入らなくなってしまうのが現実なのであります。

 最近、若い頃読んだ本やマンガを読み直したい衝動に駆られる事がしばしば御座います。歳をとったという事なのかも知れませんなぁ。例えばアニメージュ・ワイド・コミックスの「風の谷のナウシカ」。最初に読んだのは大学1年の頃だったでしょうか。当時私は、これをを松本浅間温泉の同じ下宿に暮らしていた電子工学科のY君から借りて読んだのでありました。確かコミックスとしてまとめられた形ではなく、月刊アニメージュのバックナンバーだったと記憶しています。実はアニメーション映画の「風の谷のナウシカ」(宮崎駿監督作品)は、このワイドコミックス版から見れば、長大なストーリーのホンの一部分に過ぎないんですよ。知ってました?結局、今年になってから丹念に古本屋を巡り、全巻集めました。いやぁ、面白い。1980年代に既にこうしたストーリープロットをしていた宮崎駿氏は、やはり天才でありましょう。

 たむらしげる氏の画集も私の宝物の一つであります。「クジラの跳躍」に見られる魅惑的な緑色の絵は、本当に素晴らしい。まさに芸術作品です。こいつは初版を持っておりますよ。八王子夢美術館で開催された作品展も素晴らしかったですけれども、あくまでも一時的な催し。やはり画集は手元において、いつでも眺められるようにしておきたいものであります。

 森見登美彦氏も私のお気に入りの作家です。大学生の自堕落な生活を綴った、氏の珠玉のSF作品「四畳半神話大系」は私の愛読書の一つ。勿論、今をときめく売れっ子作家ですから、氏の作品は普通に手に入ります。と云いながらも現在買えるのは角川文庫版と電子書籍版のみ。初出の太田出版のハードカバーは既に絶版となっています。勿論私はハードカバーで所有しておりますよ。好きな作家の作品は、文庫版を待たずにすぐに読みたいですからね。

 ところがうちの息子どもは、こうした本を()でる気持ちなど皆無。私の蔵書をぞんざいに扱うので、腹が立ちます。勝手に読む事を怒っているのではありませんよ。お菓子をポロポロこぼしながら読んだり、ページを折られたりするのが嫌なのです。

 そもそも自分の蔵書でもないのにその辺に出しっ放しにするのはやめろよな〜。貴重なナウシカの絶版と、セブンイレブンで売ってる廉価コミックスとを一緒にするんじゃないよ!ゆうきまさみの「究極超人アール」の初版全巻揃いなんて、もう手に入らないんだぞ。宝物なんだ!それを風呂で読むとは何事だ〜!いっその事、私の蔵書を全面的に閲覧禁止にしちゃおうかしらん。まさに、古本と侮るなかれであります。それにしても、嗜好がオタクっぽいなぁ、我ながら。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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