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江ノ電のノスタルジックな車両 |
れなら自転車で出掛けようと思っていたのに、土曜日の朝、起きてみると空はどんよりしていて、サイクリングに行くにはちょっと微妙な天気。例え出掛けたとしても、途中から雨になりそうな案配です。帰りに降られたら寒いだろうなぁ。弱気の虫が首をもたげ、結局サイクリングは中止にして、かみさんとドライブに出掛ける事に致しましたよ。逆にかみさんは曇天を喜んでいる様子。晴れなかったからこそ、一緒にお出掛け出来る訳ですからね。
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茅葺きの鐘楼 |
行き先は鎌倉の報国寺にしました。鎌倉へは、車、自転車問わず、何度も訪れておりますが、そのほとんどは、小町通りを通って鶴岡八幡宮にお参りしておしまいという、ある種パターン化されたモノ。そこで今回はいつもと趣向を変え、初めての場所に出掛けてみようという事になったのであります。
わざわざ相模原愛川ICから東名厚木ICまで圏央道を使って国道246号の渋滞をパスしたにも関わらず、江ノ島に着いたのは午後1時前。程久保基地を出発したのが10時過ぎでしたから、結局3時間弱掛かった事になります。なんだよ〜、車でも自転車でも、時間的にはほとんど変わらないじゃん。こうしてみますと自転車ってトコトコとしか進めないようでいて、それなりに速いのですねぇ。ま、いつもの如く、おやつをモリモリ食べながらお喋りしつつの、いわゆる家カフェ状態のドライブですので、別に時間が掛かっても一向に構わないのですがね。
鎌倉市内は慢性的に渋滞しているのが分かっておりますから、手前の江ノ島に車を停めて、江ノ電で鎌倉に向かう事に致します。海水浴の時期は激混みの江ノ島界隈も、今の季節は比較的楽に駐車出来ましたよ。
江ノ島電鉄は何時乗っても風情がある路線です。車に混じって道路を進む路面電車としての区間を過ぎ、民家の軒下を縫うように進みつつ、急に海岸線に出て一気に眺望がひらけたりと、乗っていて飽きる事がありません。ノスタルジックな雰囲気満点の深緑色の4両編成の車両にも、グッと来てしまいます。
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報国寺の竹林 |
程なく、終点鎌倉駅に到着。ここからはバスに乗り換えです。報国寺は、結構、駅から離れていますから、歩くとなるとちょっと大変。だからといって車では、駐車場の確保に一苦労なのでありますよ。結局のところ、鎌倉散策には、バスが最も適しているのかも知れませんね。報国寺へは5番乗り場から金沢文庫行きのバスに乗ります。乗車するのは15分間程。浄明寺バス停で下車します。歩いて歩けない距離でもないでしょうけれども、路肩が狭く、歩いて楽しい道ではありません。やはりバスにして正解でしたよ。
功臣山報国寺は、室町幕府を開いた足利尊氏の祖父に当たる足利家時によって開基された臨済宗の禅寺であります。鎌倉幕府が京都を見張る為に六波羅探題を置いたように、鎌倉幕府凋落後、今度は逆に京都の室町から鎌倉を見張る目的で置かれた鎌倉公方には、足利尊氏の息子、足利基氏が就いたとされています。以来4代90年に渡り鎌倉を統治した足利氏でありますが、永享の乱に破れ、切腹を余儀なくされたとの事。つまりここ報国寺は足利公方終焉の地という訳です。
山門を入り本堂に進みますと、左手に鐘楼が見えます。それにしても茅葺きの鐘撞き堂とは珍しい。前庭はしっとりと苔生していて、今日の曇天が更なる風情を与えています。大賑わいの鶴岡八幡宮に比べたら、人出も少な目でひっそりしたモノ。いやあ、大人のデートには打って付けでありますよ。
拝観料を支払って、奥庭に入ります。ここ報国寺は竹林の寺として有名なのです。地面は、落ちて茶色くなった竹の葉で覆われていて、そこに約2000本もの太い孟宗竹が天を突くが如く生えています。清冽な空気。奥にある大きな岩からは清水が流れ出ています。静かです。かつて、かの文豪、川端康成氏もこの寺領内に住まっていた事があるとの事。氏はこの山間の静寂の音無き音を「山の音」と表現したそうであります。
孟宗竹の林の中を歩いていくと、左手奥に庵があります。休耕庵です。ここで抹茶を頂きます。和三盆で出来た乾菓子と抹茶がよく合います。かみさんが、「Yasちゃん、美味しいねぇ」とヒソヒソ声で私に話し掛けます。自然と声を潜めてしまう雰囲気がここにはあります。普段の我々の生活が、いかに騒音に満ちたものであったかを実感させられた気が致します。
報国寺からバスで八幡宮まで戻り、小町通りの店々を冷やかしつつ、鎌倉駅までブラブラと歩きます。竹林の庭の静寂も趣に満ちていますが、小町通りの喧噪も楽しいモノ。途中、名物のシラス丼を食べたり、古本屋を覗いたり、かみさんにマフラー買ってあげたりしながらの漫ろ歩きを満喫致しました。色々な場所を駆け足で巡るのではなく、今回のように、的を絞ってスローに過ごす鎌倉も、中々面白う御座いました。
【つづく】
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