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 地球温暖化対策について考える(第7話:温暖化は自然現象なのか篇) 

イスハウス・アースとホットハウス・アースという言葉をご存じでしょうか。地球は温暖化と寒冷化を周期的に繰り返しており、恐竜が繁栄していた中生代(2億5,000万年前〜6,500万年前)はホットハウス・アースと呼ばれる気候であったとされています。現在のようなグリーンランド氷床や南極氷床は存在せず、極地方も温暖な気候が広がっていた事が分かっています。

 対して現在の地球は、極地方に永久凍土が残るアイスハウス・アースの状態で、現在のような気候は、約260万年前に始まり現在まで続いているとされています。

 地球がアイスハウス・アースとホットハウス・アースの状態を繰り返す要因としては諸説ありますけれども、その中でもミランコビッチ・サイクルという考え方が有名でしょう。地球の公転軌道は元々一定ではなく、木星の重力の影響を受けて離心率が変化する事が知られています。数学では離心率はeで表され、e=0ならば円、e<1ならば楕円、e=1ならば放物線、e>1ならば双曲線になりますが、それはあくまで数学的なお話。ここでは公転軌道が円に近くなったり楕円がきつくなったりの繰り返しの事を指しています。ちなみに地球の離心率は約10万年周期で変化すると云われています。

 同様に自転軸の傾きも約4万年周期で変化すると云われています。地球の自転軸は公転面の垂線に対し23.4度傾いている事が知られていますけれども、例えば月は地球と同様の傾きで地球の公転面とはズレて地球の周りを回っておりますから、地球の重心に対する力との差分いわゆる潮汐力と太陽や木星などの黄道上の重量物から受ける力の偶力は、地球の自転軸を起こそうとするトルクとして働きます。こうしたトルクは木星と地球と太陽の位置関係により変化する訳ですから、地軸の傾きも周期性をもって変化するという事になるのです。

 地軸の傾きが大きいほど夏と冬の差が顕著になりますし、地球の公転軌道の楕円化が進めば、ケプラーの面積速度一定の法則により、太陽に近づいている期間に比べて、太陽から離れている期間が長くなります。これらの組み合わせによって、アイスハウス・アースとホットハウス・アース(温暖化と寒冷化)を繰り返すという考え方が、ミランコビッチ・サイクル学説であります。

 地球温暖化は、人類による温室効果ガスの排出が無かったとしても、自然現象として起こり得る訳ですが、これを理由にして「温暖化対策なんて必要ない」と決めつけるのは、あまりに早計と云うものでしょう。ミランコビッチ・サイクルは、10万年と4万年の複合サイクルですから、1760年に始まった産業革命を契機に、まだ260年余りしか経過していないのに顕著な温暖化が観測されている事実を考えれば、今回の温暖化を単なる自然現象として扱うには無理があるのは明白です。

 それにしても忘れてならないのは、我々は温暖化の責任の所在を明らかにしようとしている訳ではないという事実です。人類の活動由来の現象か、それとも自然由来の現象かなどは関係ありません。我々が築き上げてきた文明を守る事。その事こそが目的であり、その為に温暖化を止める必要があるのです。

 温暖化が進み海水温が上昇し、海水中に閉じこめられていた二酸化炭素やメタンハイドレードが空気中に放出され、更に温暖化が昂進する。温度上昇により極地方の氷床が融解する事で氷に閉じこめられていた温室効果ガスが空気中に放出され、更に温暖化が昂進する。更に気温が上昇する事で熱帯が植物の生育に適さない程の気温になり熱帯雨林が枯死する事で、光合成による二酸化炭素の吸収が止まり更に温暖化が昂進する。こうして一気にホットハウス・アースが出現する事になります。

 平均気温が5度上昇すると、融解した氷床によって海水面は60m上昇するという試算があります。東京しかりニューヨークしかり、海沿いの大都市は水没し、我々の文明は失われてしまうでしょう。水没を免れた日本の国土が、熱帯雨林化するのか、はたまた砂漠化するのかは定かではありませんが、少なくとも人が住むには適さない土地になるのは想像に難くありません。温暖化についての責任の所在など関係ないのです。シンギュラリティを迎えないようにする事。それこそが我々に残された唯一の道なのであります。

【つづく】

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