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  ルビを積極的に振ろう  

 徒然

 界陸上女子槍投げで金メダルを取った北口榛花(はるか)選手について、高校時代の陸上部の先生が、槍投げ未経験者であった北口選手の身体能力の高さからその才能を見抜き、「槍投げをやってみないか」とスカウトしたという話を受けて、TBSの安住(あずみ)紳一郎アナウンサーが、「その先生の見る目がスゴいですね」と伝えようと「慧眼(けいがん)でしたね」と云おうとして間違えて「すいがん」と云ってしまったそうであります。

 安住紳一郎アナウンサー程のプロフェッショナルでも、読み間違える事もあるのだなぁと感じた次第。確かに慧眼の「」とハレー彗星の「」はとてもよく似た字で、下に「心」がついているかいないかの違いでしかありません。安住アナウンサーは「この歳になるまでず〜っと『すいがん』と読むと思っていたんです」と発言していました。でもねこれって、誰にでも起こり得る事ですよね。私自身も気付いていないだけで、どこかで大恥をかいているかも知れないのです。

 漢字の「書き」は書き取りなどで練習可能ですが、漢字の「読み」については、たくさん本を読む位しか方法がありません。厳密に云えば漢和辞典で引けば良いとは云え、部首で探したり総画数で探したりと、漢和辞典を引きながら読書するのは、実際には現実的な方法とは云い難いのも事実。そもそも読みを間違えて記憶していたら、わざわざ辞書に当たろうとは考えませんしね。

 そこで重要なのがルビの存在です。いわゆるフリガナ。難しい漢字ばかりでは子供が読む事が出来ませんし、逆にひらがな表記では大人は読み難くていけません。それに大人だって全ての読みを的確に記憶している訳ではないのですから、ルビはこうしたミスに気付くきっかけになり得ますし、未知の言葉も積極的に国語辞典に当たろうという気にもなるというもの。

 ところで皆様、ハリーポッターシリーズはお読みになられましたでしょうか。静山社(せいざんしゃ)から出版されているハリーポッターシリーズの日本語版は、しっかりと漢字が使われている上に、これでもかという位にルビが振られていて、大人も子供も読みやすいように作られております。こうしたルビの存在が、特に子供達にとって、語彙(ごい)の理解に大いに役立つ事は間違いないでしょう。既にルビの効果を理解した上で、積極的に取り入れている出版社も存在するのです。

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、ポスト時にルビを振れないので(厳密に云えば方法が無い事はないのですが非常に面倒)、漢字で入力するか、ひらがなで入力するかの二択になってしまいます。これでは漢字の「読み」を学習する機会は完全に奪われてしまいます。

 例えば、「代替品(だいたいひん)」を「だいがえひん」と読んだり、「()くも()しくも」を「()くも(わる)くも」と表記したりする間違いは、子供の頃に触れた本にルビさえ振ってあれば、回避出来た筈の事なのです。実際に「物事の()()し」という言葉や「善悪(ぜんあく)」という熟語が存在するのですから、そう説明されれば「良」と「悪」をセットで使用する事の間違いや、そもそも「()くも()しくも」と読む事はすぐに理解可能なのにも関わらず、ルビが振られていなかった為にこうした間違いが蔓延してしまったのではないかと思うのです。

 確かに子供用の書籍にはルビが振られています。私が問題として提起したいのは、大人用の書籍にルビを振っていないという点なのです。子供が背伸びをして大人向けの本を読もうとする行為、これこそが語彙を増やす為の最良の方法だと思うからに他なりません。

 最近、宮崎哲弥著「教養としての上級語彙(ごい)」(新潮選書)を読みました。実際のところ、ここまでのレベルの語彙は一般的には必要とまでは云えないとしても、こうした語彙の習得にルビは不可欠であるな、と感じた次第。

 著者の宮崎哲弥氏も同じ考えをお持ちのようで、ニッポン放送(AM1242KHz,FM93MHz)の「飯田浩司のOK!CozyUp!」の中で、一般財団法人ルビ財団(https://rubizaidan.jp)の存在について熱く語っていらっしゃいました。

 HTMLの文法でもルビの表記については規定されていて、この yaszone.jpでも、読み間違いが発生しやすそうな場面では、以前から、積極的にルビを振って参りました。この yaszone.jpは平均的に一日当たり5,000〜8,000PV程度。そのうち小さなお子さまの読者がどれ程いらっしゃるかは不明ですが、今後も必要に応じてルビを振っていこうと改めて決意した次第であります。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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