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  文系の方への大いなる尊敬  

 徒然

 は自他ともに認める活字中毒者でありまして、しかも電子書籍を好まないものですから、読むのは基本的に全て紙の本。日々、小説本に埋もれて暮らしております。

 こうした性癖は、生粋の理系出身者である事の反動、いわば一種のコンプレックスかも知れません。国語や社会などの文系科目の成績は最悪であったにも関わらず、高校時代からまさに貪るように小説を乱読しておりました。それがもうすぐ58歳を迎える現在まで続いているという訳であります。しかも図書館は嫌いで本は購入して読む派。ちぇ、我ながら、不経済極まりねぇな。

 普段は贔屓の作家の新刊を追うと共に、さぁっと流し読みをして気に入った本を購入する位なのですが、本読みとしては直木賞、芥川賞、本屋大賞作品は外せないところでありまして、内容など関係なくいわゆる「ジャケ買い」をするのが常であります。話題の本には、一応目を通しておこうという訳。

 2023年夏の直木賞は、永井紗耶子著「木挽町(こびきちょう)のあだ討ち」(新潮社)と垣根涼介著「極楽征夷大将軍」(文藝春秋)の2作でありました。両著とも私の苦手な歴史小説でしたが、受賞作をリアルタイムで読むのは私の習慣でもありますから、好みに関係なく、アマゾンで購入し読み始めたのであります。

 「木挽町のあだ討ち」は江戸時代のお話。語り手を変えながら事件の真相に近づいていくという、中々良く出来たミステリで、楽しく一気に読む事が出来ました。

 問題は「極楽征夷大将軍」であります。室町幕府の開祖、足利(あしかが)尊氏(たかうじ)とその実弟の足利直義(ただよし)の数奇な運命を伝記的にまとめた本なのですが、当時は幼名から出世の度に改名していくので、名前がコロコロ変わって参りますし、晩年、足利直義の屋敷が京の三条にあった事から、直義の事を「三条殿(さんじょうどの)」と呼んだり、自らの屋敷を「三条(さんじょう)坊門(ぼうもん)」と称したり、同時に相模の国の守護を兼任していた事から「相州殿(そうしゅうどの)」と呼ばれたり、登場人物の呼称が様々で一々混乱してしまうのであります。

 しかもこうした事情の説明は、作品内ではごく簡単にさらりと語られるだけなのです。更に、登場人物がやたらと多いいわゆる歴史群像劇でありまして、読者が元々日本史的素養を持っている前提で書かれているものですから、さあ大変。高校時代、社会の時間はもっぱら睡眠に充てておりましたし、大学以降、日本史とは全く縁遠い生活を続けてきた私にとって、鎌倉から南北朝、室町までの人物や政治背景や勢力関係を理解している前提で書かれている小説を読み進めるのは、中々大変な作業なのでありました。

 しかもこの本、二段組みの549ページの大作でありまして、ボリュームも相当なモノ。タブレットやパソコンを開きっぱなしにして、人物や役職や背景などを調べつつ読み進めました。私自身の日本史的の素養があまりにも低いために、情けない事ですが、まずは、学研の「マンガ日本の歴史」を買って読むところから始めた次第。結局、「極楽征夷大将軍」を読むために、新書など4冊も読む羽目になっちまいました。

 文系の人って、何の下調べも無しに、こういう歴史群像劇をさらりと読めるのでしょうね。だとすると、理系一直線に生きてきた私なんぞから見れば、文系の方は尊敬に値するなんてものではなく、まさに後光が射すような、神レベルに映るのでありました〜。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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